森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 “万里の長城”の問題点

| 週刊実話

 1月26日、米国のスパイサー大統領報道官が、「メキシコからの輸入品に20%の課徴金を課すことで、年間1兆1400億円を調達できるから、“壁”の建設費用はそれだけで捻出できる」と記者に語った。
 メキシコとの国境に作るという高さ12メートル、全長3200キロに及ぶ米国版“万里の長城”の建設費は、約2兆8000億円とされるから、メキシコ製品に3年も課徴金をかければ、十分回収できる計算だ。
 もちろん、トランプ大統領は、本気でそんなことを考えているのではなく、課徴金は、壁の費用負担を渋るメキシコへの脅しだ。メキシコからの輸入品だけを狙い撃ちにした関税引き上げは、WTO(世界貿易機関)が認めない。しかし、メキシコの最大の輸出相手は米国なので、最終的にメキシコが脅しに屈して、壁建設費用の一部を支払うことになるだろう。

 実は、私は不法移民の流入を防ぐために壁を築くこと自体には、反対ではない。法律は守るべきだと思う。ただし気に入らないのは、トランプ大統領の政策に“文化の香り”がしないことだ。
 本物の万里の長城(6〜9メートル)よりさらに高い12メートルの壁が延々と建設されたときの状況を想像してみて欲しい。まるで刑務所のような風景が生まれてしまうだろう。だったら少し構造を変えて、壁の頂上に幅を持たせたうえで、サイクリング道路にしたらよいと思う。もし3200キロに及ぶサイクリング道路が誕生したら、世界中から観光客がたくさん集まってくるだろう。
 現在想定されている壁の1メートル当たりの建設単価は、87万5000円だ。国土交通省の資料によると、アメリカの高速道路の建設費は、1メートル当たり190万円だ。つまり、いま考えられている壁は、単価が高速道路の半額程度のコストなのだ。だから、天井にサイクリングロードを作ることくらい、十分可能なことだろう。世界一長いサイクリング道路は、すぐに観光名所になるに違いない。

 そして、もう一つ、壁の両面には、アーティストに壁画を書いてもらえばよい。壁へのペイントを自由にすれば、書きたいアーティストはいくらでもいる。もっと言えば、壁に絵を描く権利を分譲すれば、建設費の一部を回収することもできる。

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