昭和51年8月17日、田中角栄は前日の起訴を受けてこの日、保釈された。保釈金2億円は、贈収賄事件でのそれとしては異例の高額であった。
東京拘置所を出た田中は、その足で目白の自宅に戻った。「親分出所」を待っていたのは、田中派幹部の面々であった。田中の姿を見た橋本龍太郎(後に首相)などは、あたりはばからず涙をポロポロと流した。また、田中自身はそれから間もなく、元神楽坂芸者の愛人宅に足を運び、家に上がるや一点を見詰めて、悔しそうにこう口にしたものであった。「米国の差しガネで三木(武夫首相)にやられたッ」と。
ちなみに、米国の「差しガネ」とは、田中が米国の石油メジャーを尻目にわが国の資源確保のために中東などからの新しい石油ルートを模索したこと、もう一つは、米国の意向に逆らう形で日本の今後の市場拡大も含め、中国との国交正常化に走ったことを指すようであった。後に、こうしたことは「米国の虎の尾を踏んだから」との見方も出、なぜロッキード事件が発生したかの見方の一つになった。ただし、今もって事件の本質は「藪の中」となっているのである。また、「三木にやられた」は、三木が田中逮捕の事実を事前に知っていながら、これを少しも抑えようとしなかった、すなわちあまりに「惻隠の情」がないとの考え方を指している。
東京拘置所独房内での、田中のこんなエピソードがある。某日の献立は、〈朝食〉午前7時20分…豆腐とキャベツの味噌汁・大和煮・米と麦半々のドンブリ飯(昼・夕食同じ)、〈昼食〉午前11時30分…マーボー豆腐・サンマの塩焼き大根おろし付き、〈夕食〉午後4時20分…筑前煮・おからの炒めもの・プリンスメロン。
拘置所当局のコメントは「食事をすべて食べたかどうかについては個人の名誉に関することなので一切申し上げられない」というものだったが、保釈後しばらくたって田中が田中派幹部の1人に語ったところでは、以下のようなものであった。
「しょっぱいもの大好きの田中先生としては、こうしたメニューではさすがに食欲は湧かず残したことも多かったようだ。『だいぶスリムになった』と言っていた。
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第62回
2017.04.02 15:00
|
週刊実話
ピックアップ PR
ランキング
総合
社会
1
ペンギンも〝夏の風物詩〟満喫中 あわしまマリンパークの恒例イベントに2.2万興奮「ずっと見てたい」
Jタウンネット
2
医師はいるのに「受診できない」――医療アクセスの盲点とは
TREND NEWS CASTER
3
飲食店を支える「業務用中華点心」 人手不足時代の新たな市場価値を読み解く
TREND NEWS CASTER
4
地域産品は「物語」で価格競争を抜け出せるか、500件超の商談から見えた地方ECの課題
TREND NEWS CASTER
5
スマホ時代に見直される「眼鏡の選び方」、度数だけでは解消できない目の負担とは
TREND NEWS CASTER
6
人的資本開示、進んだはずが現場は「手作業」 上場企業の7割が直面する意外な壁
TREND NEWS CASTER
7
資材高と職人不足で揺れる住宅市場、地場工務店は生き残れるか
TREND NEWS CASTER
8
年間56万トンのアパレル廃棄と女性の副業ニーズをつなぐ、「Re:che」が挑む循環型ビジネスの持続性
TREND NEWS CASTER
9
猛暑でもファン付き作業服が使えない…「防爆エリア」の知られざる熱中症リスク
TREND NEWS CASTER
10
「西洋医学×漢方×手相」という異色アプローチ 標準治療では救いきれない患者と”科学的根拠”の境界線
TREND NEWS CASTER