江戸時代の本屋さんは本の出版と販売のどちらも兼ねていました。一人前の本屋として認められるためには、まず本を出版する必要があったのです。
手に取って選べない江戸の本屋そして、本の陳列スタイルも違い、現代のように、お客さんが本を手にとって選ぶということができず、客の求めに応じて店の奥にある本を取り出してみせるというスタイルでした。店の奥の本棚に平積みにされていることが多かったけれど、客の便宜を考えて斜台に本を並べていたお店もあったそう。客が店に置いていない書物を希望した場合は取り次ぎを行ったり、古本の売買も併せて行ったり。古本の売買を行うために、ある程度は古本の知識も必要だったとか。
的中地本問屋(あたりやしたぢほんどいや)十返舎一九(じっぺんしゃいっく) 作・画
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江戸の大衆本カテゴリー当時、江戸っ子たちに広く読まれていた大衆本にはどんな本があったのでしょうか?
絵草紙や合巻(ごうかん)、人情本、滑稽本、狂歌本、枕絵などがありました。絵草紙は、簡単な物語に挿絵が施された大衆向けの小説本で、約10ページ分が1冊に綴られている短編小説です。ほぼ全ページに挿絵があったとか。合巻はこの絵草紙を5冊ほどまとめて綴じたもので、それなりの厚みがあるもの。のちには長編化して読み応えも増した、読本風のものなども登場しました。
人情本は、人情をテーマにした小説で恋愛小説仕立てがほとんど。挿絵は比較的少なく、人々の日常が描かれていました。また、滑稽本はその名の通り愉快な内容のもので、笑い本とも呼ばれていました。