ソニー配給/5月20日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかで公開
監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演/エイミー・アダムス、ジェレミー・レナーほか
一言で言えば“異星人接近遭遇もの”である。『未知との遭遇』(1977年)などの友好的な来訪もあれば、『インディペンデンス・デイ』(1996年)など好戦的な襲撃もあった。果たして今度は?
ある日、地球のさまざまな場所に、その飛行物体は現れる。友好か好戦か、色めき立つ各国の思惑のなか、動かざること山のごとしのその飛行物体から放たれる音や波動から、何らかのメッセージが伝えられていることに気付いた国家から、女性言語学者が派遣される。彼女は必死に彼らの“言語”を解読しようとするが…。
壮大なスケールなのだが、全体的に漂いまくるこの地味感はいったい何なんだ。雲をつかむような“彼ら”のメッセージもよく分からない展開が、静かにずっと続く。どうやら“ヘプタポッド”と名付けられた、彼らのタコのような先端から吐き出す図形が“言語”の代わりらしい。その墨絵のような図形は東洋的諦念、価値観、輪廻を意識したのか、とも思ってしまう。ハリウッドのSF映画では珍しく、アカデミー8部門にノミネートされたのも偶然ではあるまい。
地球の危機と見せかけて人間の心の闇を描く
だいたい、主演のエイミー・アダムスも、アメコミ・ヒーローものでヒロインを演じても地味な印象のパツキン美人女優で、今回“幼い娘を亡くし、傷心のまま一人暮らし”という役柄にまさしく適材適所。日本の女優でいえば誰? 強いていえば、松下奈緒っぽいかな、と。共演のジェレミー・レナーも『ハート・ロッカー』(2008年)の軍人などタフガイ役が多いのに、今回はマッチョ感が乏しいのも新鮮だ。
広大な宇宙からの地球への謎のメッセージは、やがて彼女自身の内宇宙をも照らしてゆく、という哲学的要素が含まれる。これは母船という意味の“マザーシップ”、幼い子を亡くした母親という意味の“マザー”を手掛かりに、時間の概念を読み解く映画でもある。
日ごろノー天気なボクでも知的探検に誘われるのは、ヒロインのエイミーのせいだろう。