映画評論家・秋本鉄次が往年の名作傑作を探る『昔の映画が出ています』 作品目『ワイルド・ギース』
イギリス/1978年
監督/アンドリュー・V・マクラグレン
出演/ロジャー・ムーアほか
6月23日、“三代目007”俳優のロジャー・ムーアが、スイスの自宅で死去した。89歳だったそうだが、まあ大往生の部類に入るのだろう。おそらく007スターで初の訃報ではないか。つい初代のショーン・コネリー(すでに引退宣言をして久しい)はどうしているのだろうか、二代目で影が薄かったジョージ・レーゼンビーは健在なのか、と007ファンはいまごろ酒席の肴としているはずだ。
そこで、彼を追悼して、007での主演作をどれか、と思ったが、新聞記事であまりにも《007の…》としか書いていないので、ヘソを曲げて、非007映画から選びたくなった。そんな偏屈オヤジさには困ったもんだが、性格だから仕方がないね。
で、選んだのがこの『ワイルド・ギース』。最近ではあまりはやらない“傭兵もの”の1本だ。かつては『モロッコ』(1930年)、『外人部隊』(1933年、リメークが1953年)、『ボージェスト』(1966年、戦前に2本の映画化作あり)、『戦争プロフェッショナル』(1968年)など一大ジャンルだったのに…。いまや、傭兵に男のロマンやセンチメンタリズムを紡ぐ時代でもないからか。
アフリカを舞台にした西部劇スタイルの傭兵映画
それはともかく、しばし“傭兵が男のロマンだった時代”にプレイバック。アフリカ某国で、クーデターにより囚われの身となった大統領を救出するため、利権の確保を画策するイギリスの大銀行家に雇われた戦争屋のリチャード・バートン。彼に集められたのが、作戦の名人=リチャード・ハリス、弓術の名人=ハーディ・クルーガー、そして名パイロットにロジャー・ムーアなど、当時としては相当に“濃いメンツ”だった。ムーアは麻薬絡みでギャングに狙われている設定で、傭兵それぞれ、過去あるいは現在に暗い影を背負っており、お金も人殺しも好きという食えない連中ばかり。“外人部隊”ってそういうワケありの巣窟だからね。