東南アジアは、「宗教の宝庫」とも言えます。
キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンズー教が混在し、それらが折り合って様々な文化を生み出しました。また他方では、ヨーロッパほど大規模な宗教対立は起こっていないという歴史的事実もあります。
東南アジアを学ぶことは、人類が目指すべき未来を模索することでもあるのです。
「非情になり切れない」という性格
タイは仏教国、マレーシアはイスラム教国、フィリピンはキリスト教国と言われています。ですが現実は、そうした区分けが必ずしも当てはまるというわけではありません。
たとえばタイのアユタヤは仏教遺跡の町として知られ、多くの外国人観光客を集めています。ただしそれは、「仏教徒しか受け入れない」という意味ではありません。アユタヤは17世紀、日本を始めとした各国から移民を受け入れてきた歴史があります。日本人は神道、ポルトガル人はカトリック、アラブ商人はイスラムというように、あらゆる宗教の人が同じ界隈を行き来していました。
東南アジアとは、ひとことで言えばアユタヤの延長線上です。
ベトナムは共産主義国家で、ベトナム戦争後は政府が宗教を弾圧していた時代もありました。カトリックのサイゴン大司教グエン・ヴァン・トゥアン師はベトナム政府に逮捕され、累計13年間という過酷な監獄生活を強いられます。
ですがその間に信仰の書を執筆し、さらに自分を監視していた看守に洗礼を施すということまでしています。ベトナム政府はトゥアン師を抹殺することができず、最終的に釈放しました。
その後のベトナムはカトリックや仏教、その他の地域信仰を受容し、事実上の信仰の自由を国民に対して認めました。