本好きリビドー(165)

| 週刊実話

◎快楽の1冊
『応仁の乱-戦国時代を生んだ大乱』 呉座勇一 中公新書 900円(本体価格)

 かつて東洋史の碩学(せきがく)・内藤湖南は「日本の歴史は応仁の乱以後だけを問題にすればよい」と喝破した。それほど屈指で画期的な大事件だったにしては、しかし、総じて印象が地味に弱いのはなぜか?
 この夏映画化で話題の「関ヶ原」や、紅白明快に分かれた源平合戦などに比べ、いわば華のあるスターの不在、東西両陣営とも(ちなみに京都・西陣の地名の由来はこの時、西軍が本陣を置いた一帯のゆえ)最終的な戦争目的の欠如、また全局面の帰趨を制するいわば名場面としての大決戦が致命的にないこと…と枚挙に暇なく理由が挙げられる中、著者はマルクス主義の強い影響下にあった戦後左派史学から滅びゆく守旧派扱いされ、ほとんど顧られることのなかった奈良の興福寺に注目を喚起する。
 音を立てて変わる世相を同時代に生きた彼らはどう眺めたか。寺社勢力のトップが精細に書き残した日記を読み解きつつ、新たな中世像に迫る筆致がスリリングだ。
 NHK大河ドラマで日本史に親しみを覚える向きからすれば、戦国か幕末にどうしても目が行きがちなところだが、大人の歴史好きにとってはこれからの穴場は室町時代かもしれない。
 とにかくもう、個別具体的に名前を挙げるのが嫌になるくらい、人間的にとんでもない連中ばかりで面白く、読んでいて疲れるほどだが、本書中でしいていえば畠山義就。この戦国大名の真に先駆けのような人物の動きを見ていると、よくもそこまで厭きずに戦い続けられますね、と呆れ返るほかない。
 それにしても学術的水準は落とさず、決して平易な記述ではないにもかかわらず40万部近い売れ行きだとか。つくづくわが国の読書人口の層の厚さを感じる。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 この原稿を書いている時点で、まだ梅雨は明けていない。にも関わらず連日の猛暑、いや酷暑にさらされ、すでに夏バテという読者諸兄も少なくないのではなかろうか。
 そこで、ビールのつまみに最適な料理が満載の『暑い季節を美味しくすごす 夏つまみ』(池田書店/1000円+税)を、今夏のオススメ本の1冊として紹介したい。
 ポイントは男でも手軽に作れる料理が多いこと。

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