宮沢賢治の童話の特色として挙げられるのが、多彩な要素を交えた世界観があることです。賢治自身は日蓮宗に帰依した仏教徒でしたが、作品には聖書を基にしたものや多神教的な世界観が多く描かれます。本項では、そうした描写が色濃く描かれた『オツベルと象』を紹介していきます。
ファンタジックと鬱展開を醸し出す、多様な世界観!
『オツベルと象』の始まりは、オツベルと言う大金持ちの家に一頭の白い象(仏教では聖なる動物)が来たことから始まります。その聖獣である白象が言葉を話し、楽しげに働くのに味を占めたオツベルは、彼の足に鎖をつけ、かつ日々の餌も減らしてこき使ったため、象は苦しんだのでした。
一部始終を天から見ていた月と赤衣の童子の助けで白象の危機を知った象達は激怒し、 『グララアガア』 と奇声をあげてオツベル邸に殺到します。オツベルも拳銃で反撃を試みるが失敗し、象達に屋敷中を壊された揚げ句、自身も踏み潰されてオツベルは死に、白象は助かります。
そうしたファンタジック、鬱展開から大逆転に移る痛快さから人気が高いこの童話は、よく見ると様々な宗教からなる世界観からできています。一番目立つのは、お釈迦様や普賢菩薩などの仏様に縁深い象、仏像に多い赤衣の童子、沙羅双樹(仏教神話に登場する植物)があるなど、仏教的な色合いが強い描写です。