「序盤は抑えて。前半と後半にひとつずつ(勝負に)いったのが決まってよかった」
12月3日、明大が29-19で早大を破った伝統の早明戦で、明大SH福田健太(3年/茗溪学園高出身)が躍動した。勝負の天秤を傾け、勝利を手繰り寄せる活躍。前半にアシスト、後半にはトライを決めた。
ふたつの場面はいずれも、激しい密集のすぐ横をすり抜けるランを見せたもの。最もボールに近くまさに人が密集したエリア、複数の敵味方がにらみ合うような間合いの近い局面で、二度も突破を成功させることができたのは、かけ引きと判断力の賜物だった。
明治、早稲田とも果敢に、しかも連携を取って次々と体を当てていくシーンが、ほぼ満員の観衆を沸かせる。特に、チームの看板であるFWのすぐ後ろで多くの判断を下す明治SH、福田健太の振る舞いはまるで『猛獣使い』のようだった。
格闘技のような場面の連続する中、福田は「球技としてのラグビー」の判断を並行して走らせる。
「相手がFWのところにフォーカスしていたので、(密集サイドは)狙っていた」
「ただ、明治のスタンダードがあるので序盤は抑えて」
決め手の札はすぐには出さない。相手のメンタル面も含め、その効果が大きくなるタイミングを計っていた。
「パス、パスのイメージを(早稲田のディフェンスに)植え付けて。前半と後半にひとつずつ(勝負に)いったのが決まってよかった」
ふたつの突破のうち、前半のアシストにつながったのは29分、FL井上遼(3年)が作った敵陣22メートル内でのラックから。相手が、明大BKの展開に備えて横に広がったところに一瞬できたスペースを、見逃さなかった。ボールを後ろにパスせず、自ら持って走り抜け、早稲田の最後のディフェンダーを引きつけてパス。NO8朝長駿(3年)のトライを演出した(ゴール決まって明大14-7早大)。
そして後半22分のトライは、スペースほぼゼロのポイントを抜けたファインモーメント。
敵陣22メートル内に入った、ほぼ中央のスクラムからの2次攻撃。右に攻めたラックから右側を抜けた。中央に回り込んでトライ(ゴール成功で26-12)、14点差とした。