【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第2話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第2話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第1話

文政七年 正月  (2)

「なんでそんな値なの」

女郎の問いかけに男ははっと笑って膝を打った。

「なんでって、他に仕事がねえからよ。それに、他の凧と違って骨組みも絵付けも全部自前でやってるからな」

「ふぅん」

女郎が妙に納得したようなまだ腑に落ちないような顔をすると、

「姐さん」、

男は小首をかしげ、女を見た。

「買ってくんねえの?」

しゅるりと頬かむりを解いた男の表情を見て、女郎は思わず顔を熱くした。

決して役者になれるほどの美男ではない。

ではないが、きりっと凛々しい眉の下の大粒の目が、星空をそのまま黒目に落とし込んだようにきらめいていた。

女郎はその熱っぽいまなざしに視線を絡めとられて逸らせなくなった。

退廃した江戸の都でこんな目をした人間を、彼女はいまだかつて見たことがない。

ちゅんとした鼻も、くちもとにも不思議な愛嬌があり、何とも言えない可愛げのある顔なのが好(い)い。

女郎はほのかに頬を上気させ、

「仕方ないね。ハイ。

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