ヒトの体にペスト菌が感染することにより発症する伝染病「ペスト」は元々齧歯類(特にクマネズミ)に流行した病気で、人間、齧歯類以外に、猿、兎、猫などにも感染する。
かつては高い致死性を持っていたことや罹患すると皮膚が黒くなることから黒死病とも呼ばれ恐れられていた。特に14世紀の大流行は、世界人口を4億5000万人から3億5000万人にまで減少させたも言われている。
完全に過去の出来事だと思っているかもしれないが、あの伝染病は決して滅びることはない。現代でもまだまだ健在だ。
もし知らないとしたら、あなたはペスト菌が隠れ棲んでいる地域には住んでいないからだろう。そうした国は確かにそれほど多くはないが、アメリカを含め、いまだにこの伝染病が広がる地域はある。
おそらくほとんどの人は知らないだろう。ペストの知られざる事実をいくつかあげてみよう。
・アメリカでは年間1~17人がペストにかかる
1914年から1920年の間、ときどき発生していたペスト。ネズミよけ対策をとったニューオリンズの建物
毎年、1~17人のアメリカ人がペストにかかるが、その80%以上がリンパ節が冒されるは腺ペストだ。
腺ペストはリンパ腺が腫れ、醜い壊疽を生じる。進行すると、肺ペストと呼ばれる別のタイプのペストになる可能性がある。
これは、胸の痛み、息切れ、血の混じった粘液を生じる肺感染症だ。肺ペストは、咳による粘液の飛沫で感染するため、人から人へ広がりやすい。あるいは、エルシニア・ペスティス(ペスト菌)を媒介するノミに噛まれることで感染する。