2月1日に日欧EPA(経済連携協定)が発効した。TPPのときのような国会の混乱もなく、メディアも「輸入ワインやチーズが安くなりました」と、呑気な消費者目線の報道に終始している。確かに、EPAによって日本から欧州に輸出される自動車の関税が、発効前の10%から段階的に0%まで引き下げられる。一方で、日本が輸入する農産物の多くの関税も撤廃される。つまり、自動車を中心とする輸出産業を有利に導くために農業を犠牲にするという構造は、TPPとまったく同じ。現に農水省は日欧EPAによって1100億円もの経済損失が日本の農業に及ぼされるとしている。
損失は、それだけではない。もっと恐ろしい事態が待ち受けている。まだ合意に至っていないが、日欧EPAは投資の自由化も含んでいる。投資の自由化が発効すると、EUのゼネコンに日本の公共事業の参加権を与えなくてはならなくなる。EUのゼネコンがわざわざ日本に来るはずがない、と思われるかもしれない。しかし、すでに来ているのだ。
伊丹空港と関西空港の運営権は売却され、オリックスとヴァンシ・エアポートの共同運営になっているが、このヴァンシ・エアポートという会社は、フランスのゼネコングループの一員だ。彼らの運営の下、伊丹空港は美しく改装された。しかし、庶民的な食堂は姿を消し、手荷物受取所の集約で、乗客は長い距離を歩く羽目になり、空港の客待ちタクシーから1回300円を徴収するようにしたため、タクシーまで集まらなくなった。
考えてみれば、カルロスゴーン容疑者が逮捕された事件も、きっかけはルノーが持ち株会社を設立することで、日産と三菱自動車の経営を強く支配しようとしたことだった。
フランスの国旗・トリコロールは、自由、平等、友愛の象徴で、英米の金融資本主義とは一線を画してきた。しかしそのフランスが、ここにきてハゲタカに変貌しつつある。悪名高い民営水道事業者の中でも、世界最大の規模を誇るのは、フランスのヴェオリア・エンバイロメントだ。日欧EPAが本格運用されるようになると、そうした欧州のハゲタカが日本を一斉に襲ってくるようになるだろう。
不思議なのは、その事態に対する日本政府のスタンスだ。
森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★トリコロールのハゲタカ
2019.02.21 06:00
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