「取り敢えず期限内申告」に潜む税理士法違反の疑いを元国税が解説

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「取り敢えず期限内申告」に潜む税理士法違反の疑いを元国税が解説
前回、無申告加算税を削減するノウハウとして、適当でもいいので、取り敢えずの期限内申告をしてみることを推奨する専門家がいると申しました。このような申告について、国税はあまり問題にしないので大丈夫などと言っていますが、法令上実は税理士法違反の疑いがあります。

■税理士法違反の疑いが残る根拠

具体的に申し上げると、税理士法では故意に事実と異なる税務書類を作成してはいけないとされています(税理士法45条)。取り敢えずの期限内申告は、あくまでも仮の申告ですから、一年間の実績に基づく申告ではありません。このため、先の税理士法に照らせば、このような申告は事実に基づかないことを知りながら行う、事実と異なる申告となります。このような申告は、税理士法の違反になります。

■さらに確定決算基準にも違反

加えて、法人税の申告は確定した決算に基づいて行う必要があるとされています。取り敢えずの期限内申告は決算以前に行う場合が多いものですから、決算に基づいた申告などできず、それだけで違法になります。

実際のところ、このようなケースについて、税理士法による懲戒事例を受けた税理士もいるようです。具体的に申し上げると、その税理士は顧客企業の協力が得られずに決算を組めなかったため、期限に間に合わないことから、やむを得ず多めの税額で期限内申告をしたようですが、それでは決算を踏まえていない、法人税法に違反した申告であるとして懲戒処分を受けたようです。

■そもそも脱法行為であることを理解するべき

以上を踏まえると、取り敢えずの期限内申告は脱法申告であることがよく理解できると思います。にもかかわらず、大した知識もないくせに、取り敢えずの期限内申告をして無申告加算税を削減しようなどと声高に力説する税務調査の専門家がいるため困ります。
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