MMT(現代貨幣理論)は、一応「理論」となっているが、実のところ「現実」の解説にすぎない。銀行預金というおカネは、何らかの借用証書と引き換えに、銀行が「ゼロ」から発行するおカネである。政府は国債発行の際、国民の金融資産(銀行預金など)を借りているわけではない。逆に、政府が国債を発行すると(政府小切手という借用証書が銀行に持ち込まれ)銀行預金というおカネが増える。
上記は単なる「現実」なのであるが、経済学や一般常識から見ると、考え方がまさしく「真逆」になっている。当然ながら、MMTはアメリカや日本の経済学者、あるいは財政破綻論者から猛烈な攻撃を受けている。
何しろ、経済学や常識の貨幣観とMMTでは、天動説と地動説ほどに考え方が異なるのだ。無論、経済学や常識の貨幣観が「天動説」であり、MMTが「地動説」になる。
元々、地動説の貨幣観を主張し続けてきた(というよりも、現実を説明していただけだが)筆者にとって、MMTは単なる説明手法の一つにすぎない。とはいえ、経済学からしてみれば、自分たちの足元を破壊する鉄球クレーンそのものだ。
さらに、財務省をはじめとする財政破綻論にとってMMTは、まさに「破綻論という太平を揺るがす黒船」である。しかも、厄介なことにMMTは現実を説明しているにすぎないため、ロジックをもって反論することができない。
というわけで、現在の日本では、ほぼ毎日のようにメディアでMMTをおとしめる印象操作の記事が報じられている。例えば、時事通信は4月8日に〈政府は借金し放題?=「日本が見本」、米で論争〉というタイトルで、MMT批判の記事を報じた。MMTは、別に「政府は借金し放題」などとは主張していない。第315回で解説した通り、自国通貨建て国債発行の上限はインフレ率、あるいは供給能力であり、財政的な予算制約はないという事実を語っているだけである。
もっとも、その手の正しい知識を持たない一般大衆は、「MMTは政府が借金し放題と主張している」といった藁人形(ストローマン)をこしらえ、釘を打ち付けるストローマン・プロパガンダに、すぐに引っ掛かる。
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』第317回 MMTという黒船の上陸(後編)
2019.04.23 06:30
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