近所のお寺さんにお参りした折、案内板を見ていた観光らしき方々が、こんな会話をかわしていました。
粟船山常楽寺(鎌倉市大船)の山門にて。
「この『開山(かいざん)』と『開基(かいき)』って何のこと?」
「さぁ……?」
その場で割り込んで講釈を垂れるのも野暮なので黙っていましたが、確かにお寺の案内板には必ずと言っていいほど表記されている「開山」と「開基」。
今回は、この両者の違いについて紹介したいと思います……と言っても、実はそんなに難しい話でもなく、最初に結論を言ってしまうと
【開山】初代住職
【開基】メインスポンサー
程度に覚えておけば十分……なのですが、それだけではあまりに味気ないので、もう少し話を続けたいと思います。
開山(かいざん)とは?寺院とは仏教における修行の場であり、俗世からなるべく隔絶された環境が望ましいのは言うまでもありません。
「この地を修行の場とする」
そこで多くの場合、日本国土の7割以上を占めている山地が候補地として選ばれる(※)のですが、最初に森林を切り拓いて(山を開いて)仏法を求めた者、との意味で初代住職を「開山」と呼ぶのです。
(※)実際には平地や海辺であっても寺院を「山」とみなして初代住職を開山と呼びます。
ただし、宗祖(宗派の元祖。教祖)のみを「開山」と呼ぶ浄土真宗や曹洞宗などの例外もあります。