“愛想笑い”って、あんまり響きのいい言葉じゃないですよね。意味は「人の機嫌を取るための笑い、おせじ笑い」(『デジタル大辞泉』小学館)、英語ではズバリ、“fake smile”というそうです。
英語にも愛想笑いという言葉があるということは、つまり日本だけでなく欧米にもその習慣があるということです。どうして人は愛想笑いをするのでしょうか。
■人はなぜ愛想笑いをするの?
ひと昔前、外国人から「なぜ日本人は意味もないのに笑うの?」と不思議がられたものですが、英語に “fake smile”という言葉があるように、英語圏の人たちも愛想笑いをしているわけです。
ただ、彼らからすると、それは「作り物、うそっぱちの笑顔」という認識があるからこそ、“fake smile”とよんでいるわけです。
◇笑顔の種類
そもそも笑顔に、本物やウソはあるのでしょうか。もっといえば、笑顔とは、そもそもひとつなのでしょうか。
タイという国はよく、“ほほえみの国”なんていわれますよね。ヘンリー・ホームズという人が書いた『Working With the Thais』という本によれば、タイ人にはほほえみ(笑顔)がなんと10種類以上あるそうです。
うれしいから、おもしろいから、楽しいから笑顔になるとわたしたちは考えますが、ヘンリー・ホームズによると、タイ人は“悲しいときにもほほえむ”そうです。つまり、文化や社会が異なれば、笑顔の種類も異なるということ。ですから、愛想笑いがダメなのかといえば、決してそうともいいきれないんです。
◇喜怒哀楽の表情は普遍的ではない
またある研究(※)によれば、タイ人から見ると、日本人の“怒り以外の表情”は、怒っている顔にしかみえないそうです。日本人もタイ人も、表情を読み取る能力にちがいはなく、まして10種類以上の笑顔のちがいを読み取れるタイ人が、日本人の表情を読み取れないのは不思議なことですよね。