森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★北陸新幹線水没は判断ミス

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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★北陸新幹線水没は判断ミス

 10月24日、JRのみどりの窓口には大行列ができた。翌日から全線での運行を再開する北陸新幹線のチケットを求める客が殺到したからだ。ただ、ダイヤは通常の9割程度の本数にとどまった。台風19号による千曲川の氾濫で長野新幹線車両センターに停車していた10編成の新幹線が水没し、使えなくなったからだ。

 台風の翌日、13日に水没した新幹線車両を写した報道写真を見て、私はおかしなことに気付いた。真横を走る新幹線の高架の線路は、水害を免れていたのだ。「台風が来る前に、本線に車両を移動させておけば、被害を受けずに済んだのではないか」と思ったのは、私だけではなかっただろう。

 なぜ、それをしなかったのか。10月25日の朝日新聞の報道によると、運転士の手配や電気・信号の準備に加え、保安上の厳しいルールがあるため、車両の退避を完了するまでに7時間はかかるとJR側は主張しているという。しかし、本当にそれは正しいのか。

 気象庁が会見を開いて、台風19号が「狩野川台風」に匹敵する記録的な大雨となり、特別警報を発表する可能性もあるとしたのは、11日午前11時だった。そしてJR東日本は、新幹線を翌12日の午前11時から順次運休させている。千曲川の堤防が決壊したのは、13日の午前4時頃とみられている。つまり、仮に7時間かかったとしても、退避の時間は十分あったことになる。しかも、車両センターは、長野市のハザードマップで最大10メートル以上、20メートル未満の浸水が予想されていた。このことを考えれば、車両の水没はJR東日本の判断ミスだった可能性が高い。

 ミスを裏付けるもう一つの証拠がある。東北新幹線の那須塩原駅近くにある小山新幹線車両センター那須電留基地では、浸水を防ぐため、事前に車両を避難させていたのだ。東北新幹線ではできていた車両の退避が、北陸新幹線でできなかった理由は、JR東日本の本社内で台風による浸水対策が共有されていなかったことになる。

 今後もモンスター台風が日本を襲うのは確実だ。だから、浸水の恐れがあるときは、車両基地に停車している車両を即座に本線高架に退避させる原則を作るべきではないだろうか。

 そこで問題になるのが7時間もかかるとされている退避時間だ。

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