小池百合子東京都知事がしきりに訴えたことで、今やすっかり浸透した「3密」。新型コロナの感染拡大を防ぐうえで、「密閉した空間」「密集した場所」「密接した場面」を避けるべきシチュエーションとして提示した。さらに、人との距離を空ける「ソーシャル・ディスタンス」という言葉もすっかり定着した。
だが、事情があって、「3密」の生活を余儀なくされる人たちがいる。刑務所にいる受刑者だ。
ここに、とある関東地方の刑務所に収監中の受刑者Aさんから送られてきた一通の手紙がある。そこには、コロナ禍における刑務所生活の日常が記されていた。気になる部分を抜粋したい。
《こういう場所にいると、ニュース等も限られていて、ある意味北朝鮮みたいな感じなので、コロナウイルスの蔓延も曖昧模糊みたいな感じで、全然実感が湧きません。マスクなんかしていませんし、まわりの囚人もインフルのほうが怖いとか、風邪に毛の生えたもんだろう…とか、俺は全然大丈夫だとか言う者も多くて、極めて深刻な事態に陥っていると考える者は少ないです》(Aさんの手紙より引用、以下同)
人の出入りがほとんどない刑務所内は、“シャバ”で蔓延する新型コロナウイルスとはほぼ無縁の空間といってもいいかもしれない。また、刑務所内ではテレビでのニュースの視聴に一定の制限が設けられているのか、受刑者たちの間で新型コロナはそれほど話題にならなかったという。
だが、事態は急展開を迎える。3月末に「志村けん逝去」のニュースが流れると、塀の中の雰囲気はガラリと一変したのだ。
《危機感を持つようになったのは、志村けんさんのニュースが大きいです。そのニュースで心配になった人が急に増えてきました。みんな、『生前の映像が見たい』『生きてる志村が見たい』と言っていました》
志村けんさんを悼むとともに、刑務所では「コロナはヤバい」「簡単に死ぬんだ」との情報が塀の中を駆けめぐった。受刑者の高齢化が進んでいるのも、さらに恐怖心をあおる要因となったのは容易に想像できる。
また、刑務所は完全に外部と隔絶されているわけではなく、100%安全とは言い切れない。刑務官はすぐ近くの官舎で暮らしているが、その家族が感染する可能性はゼロではない。