歴代総理の胆力「安倍晋三(第2次)」(4)長期政権を許した「三つの背景」

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歴代総理の胆力「安倍晋三(第2次)」(4)長期政権を許した「三つの背景」

 さて、8年弱の長期政権を誇った第2次安倍政権ではあったが、特に政権の中盤あたりから、世論の批判の対象となりだしたことが大きく三つあった。

 閣僚などの不祥事のたびに「任命責任は私にある」と国会答弁で口にするものの、「責任」はいつも行方不明、“ほおかむり”で終わっていたことが一つ。

 また、国会軽視も目立った。例えば、平成30(2018)年末の自衛隊の中東派遣も、本来なら国会で審議すべき事案であるにも拘らず閣議決定で決めてしまうなど、異例の対応をしたことが二つ目である。

 そして、官僚組織を変質させたことも大きかった。世界に冠たる明治時代の太政官制度以来の官僚制度は、官僚の「公僕」としての矜持がその底流にあった。それが「内閣人事局」の創設で変質することになった。「忖度」という怪しげな言葉が霞ヶ関を徘徊し、政治の「劣化」にさらに拍車をかける懸念が指摘された。これが三つ目である。

 そうした批判が付いて回っても、なぜなお長期政権だったのか。ここでもやはり、三つほどの背景を見ることができる。

 まず、自民党内の「ポスト安倍」候補の脆弱さがある。政権への抱負の中に、安倍を凌駕するだけの骨太さが見られないのである。「(候補の)顔ぶれが物足りない。まあ、安倍でいいのではないか」という世論の消極的支持に助けられたということである。

 二つは、非力な野党の存在である。政権を土俵際に追い込む熱量が、あまりにも欠けていた。おそらく安倍は官邸総理執務室で、長く密かに高笑いの連続ではなかったかと思われる。

 三つは、与党を組む「平和の党」公明党のガンバリの不足だ。集団的自衛権容認問題ひとつ見ても、ほどほどのところで妥協している。終始、安倍の政策推進ペースを許し続けた感があるということである。

 こうしたうえで、この8月上旬の読売新聞の世論調査は、衝撃的とも言える結果を伝えたのだった。

 内閣支持率37%に対し、不支持率実に54%と、第2次政権発足以降最悪を記録した一方で、安倍のコロナ対応での指導力についても、78%が「発揮していない」としたのである。ここでは、ついに忍び寄った「落日」を感じさせたのだった。

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