人生はやり直せるか?「腐ったみかん」から医者になった人の話

| 新刊JP
『腐ったみかんが医者になった日』(幻冬舎刊)

人生はその人の自身のものであり、自分の意志で進む道を選ぶことができる、というのは大前提として、「大多数の人が通るレール」というものが世の中にはある。そして、そこから一度ドロップアウトしてしまうと、人生を立て直すのが難しくなってしまう。

それでも、意思と目的があれば、たとえ失敗したり過ちを犯したとしても、何歳からでも人生をいい方向に向けることができる。自分が生きるべき道を見つけることができる。医師・河原風子さんの半生記の形をとっている『腐ったみかんが医者になった日』(幻冬舎刊)はそう思わせてくれる一冊だ。

■「腐ったみかん」と呼ばれた超不良生徒はどのように医者になったのか?

福岡県北九州市に生まれた風子さんだったが、小学生時代に両親が離婚し、以降は弟・妹とともに母親のもとで育てられた。

シングルマザーとして三人の子どもを育てなければならない責任から、門限やお菓子の禁止、テレビの時間制限などで生活を縛ってくる母は、当時の風子さんからすると“過干渉”に思えたようだ。そんな母から逃げるように、風子さんは家に寄りつかなくなっていく。その頃には、外で時間をやり過ごすために、家族のお金を盗むようになっていた。

中学に入り、本格的に非行に走るようになった頃、母親の乳がんが発覚。初期だったこともあり手術で治す選択肢もあるなかで、民間療法を選んだ母に納得できず、母との溝は深まってしまう。さらに家から足が遠のくようになり、高校生になる頃には、教師から「腐ったみかん」と言われるようになっていた。

教師をはじめとする周囲の大人から目をつけられ、その視線が不快でさらに非行に走る。そんな悪循環ができあがっていた。結局、飲酒・喫煙を巡るトラブルを起こしたことがきっかけで風子さんは高校を中退し、定時制の高校に編入するのだが、そこでも警察沙汰になるような事件を起こしてしまう。

普通に考えたら、このまま生活が荒んでいってもおかしくない。ただ、そうはならなかった。風子さんを引き留めたものは、医師へのあこがれだった。

ピックアップ PR 
ランキング
総合
カルチャー