吉田老人の口添えのためか、劉氏の口は滑らかだった。
「中国はニセ札市場が荒れまくっていて、正直、商売にならない。その点、日本は(現金が路上に置かれているも同然の)自動販売機が多い。さらに、切符を買う自動券売機も多い上に緩いんです。ニセ札でも簡単に換金できる。最高のビジネス拠点ですね」
ニセ1万円札を券売機に入れて少額の切符を買う。釣りの9千何百円を丸儲け。位置、駅を替えて、その繰り返しだという。
自動で換金できる機械が相手でなくとも、視力の弱くなった老人などがひとりで相対するタバコ屋なども狙い目なのだと言った。
そこかしこでニセ札が市場にバラまかれ続けているという事実に目まいを覚えたが、筆者のジャーナリストとしての好奇心が勝ってしまう。マフィアに囲まれた状態で、どんどん質問を重ねた。
「皆さんは蛇頭の方なんですか」
「組織名は明かせませんが、まぁ、そんなところですね」
「他にはどのようなビジネスを?」
「昔からやっていることは〝密航〟ですね。