フェイクニュースに陰謀論、詐欺など、私たちの身の回りには「ウソ」が満ちているし、それは年々巧妙になっていく。
誰もが「疑わしい情報」を鵜呑みにしないためのセンサーを持っているものだが、どんなに疑り深い人でもまちがった情報を信じてしまうことはある。これは「正しい情報のみを完璧に選別できる人などいない」という以上に、脳の性質が関係しているようだ。
脳科学者の中野信子さんが著書『フェイク ~ウソ、ニセに惑わされる人たちへ~』(小学館刊)で指摘しているのは「騙されたがっている」という脳の性質だ。
よく言われているように、偽情報やウソに騙されないためには「それが事実なのか」「事実と信じてよいのか」「リスクはないか」など、情報を検討し吟味することが唯一の方法になる。情報には常に「疑いの目」を向ける、ということだ。
ただ、口で言うのは簡単だが、これは結構難しいことかもしれない。というのも、中野さん曰く「脳は怠け者」で「思考のプロセスでもできるだけリソースを使わないようにして、消費するエネルギーを節約しようとしています」。情報を疑うと、そこには思考が生まれる。しかし、脳には思考をしないようにして、脳の活動を効率化する性質があるのだ。
思考したくなければ、人からの命令に従ったり、「まあ、正しいだろう」と情報を検証せずに信じるに限る。疑うことは騙されないために必須だが、そもそもそれを徹底できる人は少ないのだ。
■戦争や災害時にフェイクニュースが広がるワケさらに言えば、脳は「判断保留」を嫌う。これも考えなければならない問題を複数抱えることで、脳に負荷がかかるからだ。「真偽不明な情報は、一度判断を保留し、さらに情報を集める」という、騙されないために不可欠なプロセスは、実は脳には向いていないのだそう。
また、精神状態も物事の判断に影響する。不安や焦りが制御できていない時、私たちは平常時では考えられない判断をしてしまうことがある。