関西に生息するアヤシくてオモロい人たちに、大阪出身・京都在住の人気ライター・吉村智樹が直撃インタビュー!
■昭和、平成、令和を駆け抜ける変幻自在の漫才超特急に迫る!
上方漫才界の至宝、『シンデレラエキスプレス』が結成35周年を迎えた。
「シンプレ」の愛称で親しまれる彼らは、長身の松井成行さん(59)と小柄な渡辺裕薫さん(55)による凸凹コンビ。ボケとツッコミが縦横無尽に入れ替わり、どこまで台本で、どこからアドリブなのか判然としない。まるでフリージャズのようにスリリングな漫才だ。
変幻自在なスタイルは35年間、一貫して他の追随を許さなかった。
幼少期から芸人名鑑を暗記するほど、お笑いが好きで、漫才師になるのが夢だった渡辺。対して松井は、「芸人に憧れる気持ちはなかった」と言う。
松井「アルバイトで車を運転しているとき、カーラジオから新人漫才師のネタが聞こえてきたんです。これが全然、面白くない。“こんなネタでええんか。楽勝やな”と思ったのが、お笑いの道に進んだ動機ですね」
胸に抱いた気持ちは正反対な2人だったが、1988年、ほぼ同時期に松竹芸能の養成所に入所する。意気投合するきっかけは、深夜番組で披露したモノマネだった。
渡辺「相方は洋物ピンク映画の男優の声、僕は藤波辰爾の呼吸音のモノマネをやったんです」
激シブなモノマネで周囲を脱力させた2人は自然と言葉を交わし、ともに漫才志望だと知り、松井からコンビを組まないかと誘った。
渡辺「あれは屋台のラーメン屋さんでしたね。“ツッコミやらへんか”“やりましょう”、そんな話をして結成しました」
松井「そうやったっけ? 僕の記憶では銭湯やったんやけど」
■女の子からの声援に背を向け芸に邁進!
結成時の記憶が食い違っているのが、のちの舌戦漫才の幕開けのようで面白い。