福島正則(ふくしま まさのり)は、戦国時代から江戸時代の初めにかけて活躍した武将です。豊臣秀吉のいとこという縁もあり、若いころから多くの戦で手柄を立てた勇敢な人物として知られています。
しかし、そんな彼にはひとつ、大きな弱点がありました。それはお酒です。
正則はたいへんな酒好きで、飲むと気が大きくなり、つい羽目を外してしまうことがありました。その酒癖のせいで、彼は生涯の中で二つの大切なものを失っています。
ひとつは、家の宝ともいえる名槍「日本号(ひのもとごう/にほんごう)」。もうひとつは、信頼していた家臣の命でした。
ひとつ目の喪失――名槍「日本号」ある日、黒田家の使者として母里友信(もり とものぶ)という武士が正則のもとを訪れました。友信は、黒田家でも一目置かれる槍の名手で、しかも大の酒豪としても知られていました。
正則は、そんな友信に大きな杯に酒を注いで勧めます。