日本の水辺の風景といえば、真っ先に思い浮かぶのが「スワンボート」ではないでしょうか。のどかな公園の池や、山々に囲まれた湖で、優雅に、あるいは必死に足を動かして進むあの白い鳥の姿は、いまや日本のレジャーにおける「原風景」の一つと言っても過言ではありません。
しかし、なぜこれほどまでにスワンボートが日本中に普及したのか、その背景に隠されたドラマを知る人は意外に少ないものです。そこには、一企業家の情熱と、時代の変化、そして「しっぽ」が生んだ奇跡のヒット物語がありました。
スワンボートの歴史を遡ると、意外にもその発祥は日本ではありません。世界初のスワンボートは、1877年にアメリカのボストンにあるパブリック・ガーデンで誕生しました。
当時、ロバート・ワグナーという人物が、ワーグナーのオペラ『ローエングリン』に登場する騎士が白鳥に導かれるシーンにインスピレーションを受け、白鳥を模したボートを作ったのが始まりとされています。
しかし、現在私たちが日本の各地で目にしているスワンボートは、このボストンのものとは異なります。日本にスワンボートを定着させたのは、群馬県邑楽郡明和町にあるボートメーカー、株式会社スナガ(旧・砂賀造船所)でした。