新年早々、とあるクライアントより、異物混入被害についての相談を受けた。いま世間を騒がせている「店の商品にいたずらしてみたw」などと題する異物混入動画投稿事件についてだ。
警察に被害申告したところ、すでに犯人は特定されており、別件で逮捕状を請求することを理由に被害届の受理を保留された。明確な証拠が揃っている事件から処理して、いち早く逮捕状を取り、身柄の確保を優先するのは警察の常だ。その他の余罪は、逮捕後の調べで立件していくつもりらしく、事後の協力を約束させられた。
費用対効果を考えれば、すべて警察に任せておきたいところだが、再犯や模倣犯に対する警戒を怠る訳にもいかない。対策に頭を抱えるクライアントの担当者と共に投稿動画を確認してみると、異物を混入する動画のほかに、自らの万引き行為を撮影した動画もみられた。その中で「万引き動画を百回更新する」と宣言した犯人は「万引きで日本一になるのが目標だ」と言い放ち、「超余裕ですよ」「反省はしない。反省したら負け」という言葉を繰り返している。我々に対する挑戦ともいえる言葉に、得体の知れない怒りを感じたのは言うまでもない。この手で捕まえてやりたいと闘志を燃やすのは、店内犯罪を専門に扱う保安員として当然のことだろう。
投稿動画から得られた情報からすれば、チョコレート系の菓子やペットボトルのドリンクを狙う犯行が多く、隠匿よりも持ち出しの手口が目立つ。犯人は小心者らしく、万引き日本一を目指す者とは思えぬ大きな挙動を示しているので、我々の目に入れば比較的容易に検挙できる事案といえる。動画が投稿される度に挙動は小さくなり、犯行に要する時間も短くなってきてはいるが、我々の目をごまかすことはできないレベルの動きだ。
だが、流しの犯行を繰り返す常習者と遭遇する確率は低く、偶発的に捕捉されるという事態に期待するほかない。そうしたことを説明したところ、直接被害にあった店舗と、隣接する店舗で特別警戒を実施することとなった。犯人と遭遇する可能性は極めて低いが、指名検挙での失敗は許されない。万全を期するために、ベテランの腕利き保安員を中心にシフトを組んで、神出鬼没な愉快犯の来店に備えた。