夏の匂いがする、夕暮れ時の神保町にて。気がつくと見知らぬバーに引き寄せられていた......。
夜の帳が下りるには、まだ少しだけ早い。店内には、なにかを書き留めている女性がひとり。彼女を横目にみながら、二席空けてカウンターに腰を下ろす。
―――マスター。ドライなマティーニを一杯
「かしこまりました」
「うーん、疲れたー」
―――失礼。物書きの方ですか?
「映画の脚本を書いてて。ちょうど、一段落ついたところです」
―――それはご自身の作品を?
「はい。監督・脚本を担当しているんです」
―――それはすごい。