[DMM.com会長・亀山敬司対談ノート]

【亀山敬司×経沢香保子~新規事業の作り方】第2回|狙うは先行者利益

【亀山敬司×経沢香保子~新規事業の作り方】第2回|狙うは先行者利益

 2015年2月19日、オンライン英会話サービスやモノづくり支援など、次々と新規事業を立ち上げるDMMグループの会長・亀山敬司と、トレンダーズの創業者で、最年少上場女性社長としても知られるカラーズ代表取締役・経沢香保子氏の対談がちゅうつねセミナーで行われた。その模様を計5回にわけて配信していく。

元々のレンタルビデオ店員がIT技術者に進化

経沢香保子(以下つね) 最近DMMさんというと新規事業をとても積極的にやられているという印象があるんですけども、一番エロ以外で稼いでるのってなんですか?

亀山敬司(かめ) FXとゲームかな。FXは薄利多売だけど、何兆円っていうすごい額のお金が動いてるらしい。俺は見た事ないんだけどね(笑)。機械がガーっと回ってるらしいんだ。そういう取引があって、その0.00何パーセントを手数料で貰うっていう仕組みなんだけど。それでもまあ何十億っていう利益は出てる。

つね IT化をいち早く取り入れたと思うんですけど。

かめ もともと石川県で始めたんだけど、当初は誰もITなんて良く分からない時代だった。早くからアダルトで動画配信に入ったことで、多くのトラフィックをさばいて、セキュリティーとか配信技術とか実践で学んでいった。ほとんどが高卒とか学歴は低い社員なんだけど、実践でどんどん勉強していったの。もともとはビデオレンタル店でエプロンして「いらっしゃいませー」って言ってた奴らが今のDMMラボ社長だったり、ゲームの責任者だったりしてるんだけどね。

つね そういう元々店員だった人達がIT技術者に進化したわけですよね? それって、今さらりとおっしゃいましたけど、とっても大変な事だったんじゃないかなと思うんですけど。どうやって人の成長をうまく、しかもスキルチェンジくらいの勢いじゃないですか?

かめ 一生懸命そそのかした。「今からはITだぞー!」って若い奴らに。「これ勉強して損はないから」って。「お前プログラム勉強しろ」とか「お前デザイン勉強しろ」って、やらしてたかな 。俺は勉強しなかったんだけど(笑)

つね みんな素直に?

かめ そうだね。給料は上げてたからね。レンタル店やDVD販売で稼いだお金を注ぎ込んでね。どんどん人増やしてたから、売上は伸びたけど8年間ずっと赤字だった。儲からなくても売上が上がれば給料は上げてた。

つね なるほど、モチベーションをある程度維持させながら新しい事を挑戦するっていうのは、本人たちにとっても安心ですもんね。給料が安いのに挑戦するとかってより。

かめ うち非公開だから、ストックオプションとか株っていうよりは、スーパーサラリーマン目指して給料で稼げみたいな。非公開株なんて貰ってもしょうがないからね。だからカルロスゴーンなみのスーパーサラリーマンがうちの会社にはいるんだけど、株は基本的に持たないって感じの考え方。

つね FXとゲーム以外で、伸びそうだなって思う事業って何ですか?

かめ まだ時間はかかるけど5〜6年後には3Dプリンターとか、DMM.make AKIBAっていうビジネスがある。これはまだIT系会社もあまり参入してないっていう状態なんで、先行者利益取れるかなって思ってる。ITの経営者って結構アタマいいじゃない。良い人材も集まってて、ソフト開発とか技術的に向こうの方が上かな、と思ってる。なので、次の「モノのインターネット」っていう世界での先行が欲しい。

つね なるほど。

かめ あれは自分たちが技術者を雇うわけじゃなくって、お金を貰って場所を提供して、その分好きな道具使って好きなことやっていいよって。そしたら日本中からいろんな人が集まってロボット作ったり、新しいスマホを作ったり。技術者からすると知恵さえあればなんでも作れるっていう場所なんだけど。勝手にチーム組んだり、投資家たちが集まってきたら面白いかなと。

つね じゃあ、場を作ってるっていう感じですね?

かめ そうね。場を作っても技術者たちの苦手がある。例えば量産するとき海外の工場を用意してあげるとか。特許権管理をしてあげるとか。あと海外への販売、いろんなイベントにまとめて出してあげるとか、資金調達とかね。日本の技術を世界へ売り込む。そういったことをビジネスにしようかなっていうのが今の考え。

誰も相手してくれない時間の方が大事

つね 私が最初に亀山さんのエピソードを川邊健太郎というYahooの副社長の方に聞いて、興味を持ったネタっていうのは、亀山さんがある時にもっと外の世界を見ないといけないとお気づきになられた瞬間があって、それで六本木のバーに行き始めたり、今までしてなかった会食を毎日するようになったという話なんですけど。なんで内にこもってたのが外に出ようと思ったのですか?

かめ もともと「起業家が外に出てもロクなことがないな」っていう考えだった。ホリエモンとか見てても叩かれやすいじゃない。

つね 目立ったら叩かれる。

かめ それにプライベートもやっぱり、外をブラブラしてて知らない人に指さされたくないし、人前に出ない方がいいと思ってて。だけどさすがに50歳すぎると仕事のネタが出なくなってきて。なかなか社内から起業ってのも難しくて、社員は良しきも悪しきもやっぱり俺の方向に賛同してきてるから。

つね 内向き上向きになっちゃうんですよね。

かめ だから自分が外に出かけるか、または亀直っていうカタチで外から新しい血を入れてくか、いろんな人と会っていこうかなって。それがきっかけかな。

つね なんでマスコミ嫌なんですか? 有名になると有名税高いからですか?

かめ 高いと思うよ、有名税。 高くつき過ぎてるんじゃない?自分も。

つね めっちゃ高くついてますけど、でもその分いい事もいっぱい。私のこと知らない人にも知ってもらえて。

かめ 俺はどっちかっていうとやっぱりマイナスかな。だってほら、チヤホヤされることもあるだろうけど、それはもう会社でされてるし、アワバーでもここでも名乗ったらチヤホヤしてくれるじゃない。

つね「DMMねー」みたいな。

かめ それよりも、誰も相手してくれない時間の方が大事じゃない。自分も見失っちゃうし。

つね 確かに。絶対みんなおだててきますもんね。そうですね。自分のこと知らない人とちゃんと接する。

かめ ただのジャスト亀山として「いいですね」って言ってくれたほうが嬉しいじゃない。

つね 確かにDMMの「亀山さん来た」って、イコール「金持ち来た」ですもんね(笑)なにそんなピュアぶってるんですか。金持ちの方が楽じゃないですか(笑)

かめ 楽なんだけどね。素のおれで勝負したいみたいな。まあ勝負する歳じゃないけどね。(笑)

つね 人付き合いが嫌いだったとか、そういうわけではなくって?

かめ うん。普通に人と会ってたし、ひきこもりでもないよね。出たがりじゃなかったってくらいだから。でも今はちょっと考え方が変わって、まあ出てる中で色んな出会いもあるし、あとちょっと世間的にね。「エロやっててもヤクザじゃないよ」って、そんなに悪い人じゃないアピール。

つね いい人だということを?

かめ なんかイメージとしては「金のネックレスしてませんね?」とか「ロレックスじゃないんですか?」とか言われるわけよ。もともとマイナスだったらゼロになっただけでもマシじゃない。会って普通って思われたら、今よりプラスになるっていう(笑)

(【亀山敬司×経沢香保子~新規事業の作り方】第3回へ続く)

【亀山敬司×経沢香保子~新規事業の作り方】第1回|人だけに頼らないビジネスを
【亀山敬司×経沢香保子~新規事業の作り方】第3回|騙されることでタフになる
【亀山敬司×経沢香保子~新規事業の作り方】第4回|節操のなさも個性
【亀山敬司×経沢香保子~新規事業の作り方】第5回|泥臭い仕事で有利に立つ

※対談全編の音声はこちらからお聞きいただけます。

プロフィール

株式会社カラーズ代表取締役社長

経沢香保子

桜蔭中高→慶應経卒。新卒でリクルート→創業間もない楽天で楽天大学を設立後、26歳自宅でトレンダーズを創業。30代で、3回の出産・育児、2012年に東証マザーズへ当時最年少女性社長での上場を経験。2014年(株)カラーズ設立 代表取締役社長。

株式会社カラーズ:http://colorsinc.me/

プロフィール

DMMグループ会長

亀山敬司

石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT業界の大物まで登り詰めるも、めったに人前に姿を現すことがなく、その正体は謎につつまれている。

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