いつか自分という存在を形成する、いわばアイデンティティーと呼ばれるものが、すべて無くなってしまうとしたら、 自分はいったいどんな存在になるだろうか。 そういったことが現実に起こりうる、という事実を踏まえて、考えたことはありますか? 本日ご紹介するストーリーは、医学生である著者が書いた、「人に最後に残るもの」のお話。 あなたがなにもかもをなくしてしまうとき、最後に残るものは、残したいものは、なんですか?
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(以下、STORYS.JPより一部転載)
外来で認知症のおばあちゃんを診ました。
「ありがとうね」と「わかるよ」をなんども繰り返していました。
僕の指導医がご家族に、
「惚けちゃってるから手術しても意味がないよ」
と言ったときも、ご家族が撃たれたような顔をしている横で、
「わかるよ」
と繰り返し、繰り返し、つぶやいていました。
息をするのがすこし苦しいような気持ちになりました
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みんな自分だけは惚けないと思って生きている。
あるいは、そんなこと考えない。考えないようにして生きてる。
でも、たぶん、そんなの無理だ。
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人間はなかなかどうしてうまいことできているもので、一定の年齢を過ぎ、さらに年輪を重ねていくと、
いろんなものを失くしていきます。
懐かしいものの記憶、ついさっきの記憶、
好きだったもの、嫌いだったもの。
体力や気力もどんどん失って、今まで歩んできた人生の道も忘れて、
そうして最後に残るのは、その人にとって、「譲れないもの」だそうです。
このおばあちゃんが繰り返し言う「わかるよ」という言葉。