日系紙おむつ企業の飛躍…ASEAN市場制覇への道
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ASEAN諸国への日系企業の進出が、ますます盛んになっている。いろいろな問題点が見えてきた中国の代替投資先として、東南アジアの国々がクローズアップされているという面もある。
もちろん、一口に“日系企業”といっても分野は様々だ。たとえば長年日系進出企業の雄として君臨しているのは自動車関連企業だし、それに続くのはやはりモーター工業分野の会社である。逆に言えば、進出先の国の市民に“モーター製品といえば日本”というイメージが、すっかり定着しているということだ。
だが最近では、自動車工業に追いつけ追い越せとばかりに目覚ましい業績を上げている分野もある。
製紙産業だ。もう少し平たく言えば、紙おむつ産業である。
■ 紙おむつでASEAN進出
去年、中国人による紙おむつの買い占めが問題になったことがある。これは日本製の紙おむつが、海外で絶大な人気があるということから発生した現象である。
少子高齢化に苛む日本とは違い、世界には国民平均年齢が30歳にも満たないという国が存在する。これはそれだけ乳幼児の数が多いという証明でもあるし、またそのような国ほど経済活動が活発だ。若者は貯蓄よりも消費を選ぶ。
だからASEAN地域での小児用紙おむつ市場は、まさに宇宙を目指して空を駆け上がるロケットのような勢いである。その中でも日系企業の紙おむつ製品は、現地の母親から絶大な支持を得ている。これは決して誇張ではない。ASEAN諸国のおむつ市場で頂点に立っているのは、日系衛生用品大手のユニ・チャームである。
そもそも東南アジアでは“手間も金もかかる”という理由で、紙おむつはおろか布おむつもあまり履かせないのが一般的だった。もちろん富裕層の家庭は別だが、たとえば月収1万円ほどの家庭が、1パック1,000円の紙おむつを買うことができるだろうか。そういう現実的な事情があるから、紙おむつは“金持ち向けの贅沢品”と敬遠されてきた。しかも東南アジアの家は、大抵の場合床がフローリングかタイル敷きである。汚しても掃除が容易だ。
そういう市民の“常識”を、ユニ・チャームは変革したと言ってもいい。

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■ バザールでの商品PR
東南アジアの市民は、日頃の買い物を近所の商店で済ませる。スーパーマーケットなどではなく、言ってみれば“お隣の◯◯さんのお店”という感じの零細店舗だ。そうでなければ、どこの町にも必ず一つはあるバザールへ早朝から足を運ぶ。スーパーマーケットというのは、アッパーミドル層以上の豊かな人々のためにある施設だ。
だからこそ、伝統的バザールの情報発信力は絶大である。食品や日用品を生産する企業は、新製品を発売すると同時にバザールへ広報員を派遣する。スーパーマーケットでの商品陳列は、二の次で構わない。どこの国でも実体経済を下支えしているのは庶民、すなわちローワーミドルクラスやワーキングクラスに属する市民である。
ユニ・チャームも、これと同じことをやった。町のあちこちにある零細商店やバザールに営業社員を送り込み、自社製品を置かせてくれるよう頼んだのだ。字面で書けば非常に簡単だが、星の数ほどある零細商店を一件一件訪ねるのは途方もない作業である。
しかも、現地の店舗経営者は数十枚入りのパック商品というものを敬遠する。それよりも1枚ごとの小分けにした方が売れる。東南アジアの市民は、まとめ買いということをあまりしない。その都度、必要な分だけをポケットマネーで買う。それが習慣だ。
ユニ・チャームはその要望に応え、“1枚だけのパック商品”を開発した。これが零細商店やその馴染みの顧客に受け、現地の市場に定着することができた。そうなれば、製品の質で競合できる存在は他にない。今やスーパーマーケットのベビー用品売り場にも、ユニ・チャームの紙おむつが堂々と腰を下ろしている。その様子を眺めていた他の日系企業が、ここ最近になって一斉に動き出した。
■ 市民の声に応じる
ASEAN地域の中でもっとも大きな人口を擁するのは、インドネシアである。同国の巨大な市場を狙って、花王、王子製紙、大王製紙、東レなどが合弁会社設立か、あるいはすでにある現地工場の生産キャパシティー増設に踏み切った。今も伸び続ける需要に、供給が追いついていないほどだという。
インドネシアでは、“子育てはみんなでするもの”という概念がある。筆者も以前、妙齢の女性が赤ちゃんのおむつ替えをしている光景を見て「きみの子ども、可愛いね」と話しかけたら、「何言ってるの。この赤ちゃんは友達の子よ」と返されてしまった。
日本では女性が妊娠しただけで「貞操概念がない」、「仕事をする気がない」などと言われる、いわゆるマタニティハラスメントが問題化している。だが、もしインドネシアで同じことを言えばまず驚愕され、続いて人間関係を絶たれるだろう。“子どもは唯一絶対の神からの授かりもの”である。
だからインドネシア市民は老若男女問わず、日本人の目から見ればかなり子煩悩に映る。しかしそうであるが故に、乳幼児用紙おむつは誰にとっても接する機会のあるものなのだ。
日系紙おむつメーカーは、そんな市民たちの声に応じるという義務を背負っている。企業を強くするものは、実は業績でも年商額でもない。仕事をする過程の中で生じた社会的使命をいかにこなすか、である。企業は常に、末端の市民と共にある。それを忘れてはいけない。