ガラス工房が創る「明るい未来」日系企業とチャリティー活動

FUTURUS

ガラス工房が創る「明るい未来」日系企業とチャリティー活動

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日系企業がなぜ海外に進出するのか。見も蓋もない言い方を敢えてすれば、それは“金儲け”のためである。

そう言うと、反発する人が必ずいる。だが、どんな人間でも、毎日食べるものを食べ飲むものを飲み、屋根のある住まいを求める。その中で、自らの生活レベルを向上させていくというのは自然なことで、そうするためには、まとまったお金を稼ぐ必要がある。

落語家の、三代目古今亭志ん朝は、稼いだ金で豪邸を立て外車を乗り回した。その様子を週刊誌で批判されたこともあるが、ビジネスマンとしての志ん朝の態度は正しい。“金はあるに越したことはない”からだ。

だが、老衰で死ぬまで、業界のプロであり続けるならば、それだけではいけない。ビジネスとは自由競争ではあるが、同時にビジネスマンは“公民”である。稼ぐだけの金を稼ぎ、はいサヨウナラというわけにはいかない。

自分が商売をした土地、そしてそこに暮らす人々のことを考えられなければ、ビジネスはいずれいき詰まるものだ。

それを教えてくれる企業がある。ガラス工房の『フュージョンファクトリー』だ。

■ ガラス工房「フュージョンファクトリー」


神奈川県藤沢市にある『フュージョンファクトリー』は、ガラス工芸家のノグチミエコ氏が主催するガラス工房。

筆者はこの『フュージョンファクトリー』に、去年今年と2度にわたって取材に伺った。藤沢に、ではない。インドネシアの首都ジャカルタに、である。

ジャカルタでは毎年9月頃、スナヤン地区で『ジャカルタ日本祭り』というイベントが催される。今年は9月6日〜12日まで、ショッピングモールの『プラザ・スナヤン』で特設ブース展示が行われている。そのすべてが日本にまつわるもので、日系大手航空会社や観光庁の展示も並んでいる。近年、日本の旅行業関係者は、インドネシア人観光客の獲得に力を入れているのだ。

だがその中で、特に異彩を放つのが、『フュージョンファクトリー』のブースだ。キラキラと眩いばかりの光を放つガラス工芸の作品が、ショーケースに置かれている。

果たしてこれは本当にガラスなのか?  筆者の目には、琥珀や水晶や黒曜石と寸分も変わらなかった。作品を見つめれば見つめるほど、そこにある小宇宙に身体ごと引き込まれてしまう。平均的な男性よりもよっぽど大きい身体を持つはずの筆者が、直径10センチ程度のガラス球に果てしないスケールを見た。

もっとも、この経験は初めてではなかった。先述の通り、去年も別のメディアでの取材で『フュージョンファクトリー』のブースに来ていた。思い返してみれば、あの時覚えた感動を、確かな記録として画像に残したいという動機で、帰国後に一眼レフカメラを新調したのだった。

ただ、筆者が『フュージョンファクトリー』の取り組みに関心を抱いたきっかけは、それだけではない。


■ 強く凛々しい自閉症の青少年たちとともに

『フュージョンファクトリー』がジャカルタ日本祭りでブース展示を行う最大の理由は、福祉施設へのチャリティー活動である。

ジャカルタと隣接するボゴール市に、インドリヤという自閉症児の施設がある。『フュージョンファクトリー』は、このインドリヤとタイアップする形でブースを出しているのだ。

インドリヤの青少年たちが手がけた作品も、付加価値の認められた商品として売られている。『フュージョンファクトリー』から提供されたガラスに、子どもたちが着色してネックレスやピアスなどに仕上げる。キャンバスにガラスを貼り付け、その上にまた絵を描いた作品もあった。不思議な躍動感に満ちた、「これぞモダンアート」と言うべき絵だ。

障害者へのチャリティー活動というと、どことなく悲壮感漂うイメージがあるかもしれない。だが、インドネシア国民はそもそもが前向きで明るい人々である。自分たちが、心の底から楽しみながら作品を手がけていけば、絶対に振り向いてくれる人がいる。思った通りのものを作品の中で表現すれば、唯一無二の宝物が必ずこの手の中に生まれる。

そうした「明るい未来を信じる心」が、作品の中に息づいている。

強く凛々しい、そして優しいインドネシアの姿がそこにはあるのだ。我々日本人ビジネスマンは、彼らの活動から様々なものを学び取らなくてはならない。


■ 企業は市民に支えられる

人間は“文化”を発展させる動物だ。“文化”がなければ文明もなく、人が人であり続けることはできない。

そして“文化”は、その土地その土地に根付くものでもある。“文化”への投資はすなわち地域振興であり、その逆もまた然りだ。

インドネシアで働く、ある人の苦い経験談をここで語ろう。その日本人ビジネスマン、仮にA氏としておくが、そのA氏の会社が、世界的有名企業B社と共同で事業を行うことになった。その事業は順調に利益を上げたのだが、ここでトラブルが起こった。

B社はインドネシア政府に収めるべき法人税を、1ドルも収めなかったのだ。「アイルランドで会社登記をしているから」という理由で。そう、“タックスヘイブン”を利用した租税回避である。ちなみにB社は、今や世界の誰しもが知っている企業だ。結局その法人税の請求書は、A氏のオフィスにいってしまった。

業種の違いに関係なく、ビジネスというものは「現地の人々」がいて初めて成立する。本来、それは無視できないことだ。繰り返すが、文化がなければ文明もなく、人は人であり続けることはできない。ローソクチャートでは測れない分野への投資も、明日の成長を目指す企業にとって、なくてはならないものなのだ。

小さなガラス細工は、その真理を筆者に語りかけてくれた。

【参考・画像】

※ フュージョンファクトリー

※ tankist276 / Shutterstock

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