麻生太郎財務相の失言ラッシュでいろんなものが豪快に吹き飛ぶ|やまもといちろうコラム

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画像はオフィシャルホームページより
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 やまもといちろうです。今年の夏もいろいろあったので、せめて9月に遅い夏休みでもとろうと思ったら、台風は来るわ天候は寒くなるわデーブ大久保監督は辞意表明して騒ぎになるわで、結局今年もまともに休みませんでした。まあ、人生そのものが休んでるようなものですからあまり気にしないんですけど、それはそれとして今年の夏は猛暑だった割に短かったなあ。

 そんな40男の夏の思い出不足問題はともかく、ここしばらく安全保障関連法案や新国立競技場にエンブレム問題といったネタで右往左往していた界隈も、真打登場とばかりに大物古参が出てきました。麻生太郎財務相です。

麻生財務相、切り捨て「カード持ち歩かなければ減税なし」

還付金制度:麻生財務相「けちつけるなら代替案を」

 いやー、麻生さんの発言のひとつひとつが結構な破壊力でございますよ。見出しをつける新聞社のご担当者さまも両手両指に力が入るんだろうな、という感じの素敵な文体です。やはり麻生太郎さんはこうでなければなりません。

 そもそもの話は、与党税制協議会で財務省が示した「還付制度」案についてであって、2017年4月の消費税増税のタイミングで実施するには日程が超タイトであることから揉めていたわけなんですが、この人が出てくるとその辺の行政上のテクニカルな内容がどうでも良くなってくるのは、もはや「人徳」であると言えましょう。

 この一連の人を食ったような発言は、まあ好意的に見ればギリギリ正論なのかな? という感じもしなくもないですが、それ以上に読むものに与える圧倒的な不快感が凄いです。普及させたいとはいえ、発行したばかりのマイナンバーカードを持ち歩かせ、一般のお店にもマイナンバーカードのリーダー・ライターが全国に行き届き完全に普及していなければ還付できません。おまけに上限は決まってるわ、払い戻しは即時じゃないわ、徴税や行政を実施するコストに見合った減税・還付効果がどこまであるのかまったく分かりません。

想像力の大いなる欠如が浮き彫りに

 さすがに、財務省はこの案が筋悪であることは分かっていて、最初からあくまでも実施にあたって公平性を担保するための一案と言って、ある種の「逃げ」はきっちりと打っているのも見逃せません。あくまで自公政権与党内での合意を下に、公明党からは「軽減税率制度は生活必需品に対して的確に行って、痛税感のないようにして欲しい」という強い申し入れがあったことに対する配慮だったのが本物件です。財務省としても、最低限やるとしたらこれ、というだけであって、その配慮された側である公明党からも「これではまずいでしょう」という話があるわけですから、仕切り直しになるのも仕方がないんじゃないかという局面です。

 繰り返しますが、麻生太郎さんは違います。途中で梯子を外されようが、梯子などなくとも降りないから不要とばかりに剛速球を投げ続けているんですよね。賢い人なんでしょうけどねえ、何でしょう、この勝負勘の無さは。あるいは、庶民感覚とか、これを実施したらどういうことが起きるのかという、予想に対する想像力の大いなる欠如ともいえます。

 悪い冗談で、政府がやっているポイントカードシステムに近いから「G(ガバメント)ポイントカードにしよう」という話まで飛び交う始末です。どちらかというと、個人的には仕組み上パチンコカードみたいな状態になりそうで微妙だなあと思うのですが、まさかマイナンバーカードの発行に当たってこういう飛び技がセットで出てくるとは思いませんでした。まさに政界は百鬼夜行であります。

 えー、個人的な代替案は軽減税率をやめて所得の低い人に対する一律税還付あたりが、一番コストが低くていいと思います。痛税感どころか、老人が増えて医療費の増大で社会保障費が大変な時期に増税なしに、やり過ごすのが無理なのは分かっているわけで、医療の崩壊を一秒でも先延ばしにするために落としどころを考えて欲しいと切に願う次第であります。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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