【冴え女シリーズ(5)】[私のハートもスウィーツに♪]5話(後半)「お味はいかがですか?」 (2/3ページ)
三十歳目前のとき、これでいいのかって心底思いました」
美奈「そ、それでどうしたんですか……?」
卯月「ちゃんと、世間のことを知るようにしました」
美奈「知る?」
卯月「新聞を読んで、ニュースを見る。芸能ゴシップや、話題のドラマも少しはチェックして、映画や流行りの漫画も読む。『ユニバース』を見始めたのも、このときです」
美奈「それは、今でも……?」
卯月「続けてますよ。だって、気付いてしまったんです。みんなが食べたいのは、単なる美味しいお菓子じゃなくて、その時代に合ったお菓子なんだって」
美奈「お菓子が、時代に合う?」
卯月「人の好みって、社会情勢と無縁じゃないんですよ。例えば、みんながグイグイと前に進んでいた時代は、見たこともない新しいお菓子に飛びついた。昔は良かったなぁって時代になると、少しレトロなお菓子のアレンジが。経済が悪くなってくると甘くて華やかで、夢のような見た目のお菓子が求められる。人は単純に美味しいだけで満たされるわけではないのかも知れない……」
美奈(卯月さんって、本当に色んなことを考えてお菓子を作ってるんだ……すごい……)
卯月「僕は、技術的なものだけでお菓子を作るのは反対です。この時代を生きる人の心に寄り添う味を作りたい。……なんて。