日本の企業で働く人達に「お金を使えない病」が蔓延している理由
『「会社の悪口」は8割正しい コンサルタントが教えるダメな会社の困った病』(秋山進著、SBクリエイティブ)の著者は、経営・組織コンサルタント。
本書は、ダイヤモンドオンライン「組織の病気~成長を止める真犯人」の連載記事を大幅に加筆修正したものです。
タイトルからも想像できるように、コンサルタントならではの視点で明らかにしているのは「どこにでもある組織の病」。
痛いところを鋭く突っつき、「そこからどう進むべきか」を提案しているわけです。きょうはそのなかから、日本企業とお金の関係について書かれた部分に焦点を当ててみます。
■「お金を使えない病」が急増中?
この項で著者は、企業人に深刻な「お金を使えない病」が蔓延していることに対する危機感を明らかにしています。
たとえばバブルのころなら、よくも悪くもみんなお金を使いまくったもの。しかしいまでは、「お金を使うことができない」人ばかりになってしまったということです。
なぜ、そんなことになってしまったのでしょうか?
■投資経験のある人が減っている
しかし、この理由について「誰が悪いのでもない」と著者は書いています。
会社ではあらゆる面で無駄を削られるため、長期にわたって新しい試みができなくなっている。
合言葉が「経費削減」だから、先の見えない不確定なものに投資する経験を持つ人が少なくなってしまったということ。
これは特定の会社の問題ではなく、日本企業全体の問題だといいます。
ただし、今後はそう悲観することばかりではないだろうとも著者はいいます。
なぜなら現在は昔とくらべ、情報を活用するビジネスにおいては、先行投資もさほどかからず、小規模でスタートできるようになっているから。
大企業で大がかりな新規事業や野心的なプロジェクトをはじめるのは難しくとも、既存事業を補完するような情報ビジネスなどであれば、新たな感性を持っている若い人にどんどん仕事を任せられるというわけです。
■若手が場数を踏むことが重要!
だとすれば、重要な鍵は若い世代だということになるはず。
著者も実際、経営幹部になる人のための「幹部育成研修」などやめて、期待できる優秀な若手人材に、さまざまなプロジェクトを任せるべきだと主張しています。
「お金の使い方や事業開発の流れをテキストで学ぶより、実際に損を出したり、利益を上げたりしながら現場で学ぶことのほうが断然効果がある。特にお金を使うことに関しては、場数を踏むこと以外で身につかないスキルも多い」
このフレーズは、多くの企業人が心しておくべき大切なことではないでしょうか?
(文/印南敦史)
【参考】