日歯連が政治資金裏金2億円で摘発の巻|やまもといちろうコラム

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画像は日本歯科医師連盟ホームページより
画像は日本歯科医師連盟ホームページより

 やまもといちろうです。家内が歯科医師で、口腔外科の勤務医の割に歯が悪いです。

 ところで、一昨年ぐらいから、ゆらゆらと話が出ていた政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)の違法な政治献金の件ですが、国会が無事に閉まったところで立件されたようです。さすが空気を読んでますね。安保法案やってる最中だと歯が立たないからね、しょうがないね。

日歯連前会長らを逮捕 石井参院議員へ迂回寄付の疑い

日歯連 前会長らを逮捕 政治資金規正法違反の疑い

 ということで、報じられている通り逮捕されたのは、日歯連の前会長の高木幹正さん(70)と元会長の堤直文さん(73)、それに当時の会計責任者だった村田憙信さん(70)ですが、会計責任者の村田さんが主導したという報道になってます。まあ、「こうしたらどうですか」という書類が上がったり証言が出たりはしてるんでしょうが、村田さんは単なる会計責任者で、代々の会長の申し送りの中で明確な日歯連の意志があって実行していただけでしょうから、もともとはそういう組織だったといってもおかしくはありません。

 で、2010年にこの資金受け取って選挙費用の足しにしたと現段階で見られているのは、日歯連の組織代表と目される自民党の石井みどり参議院議員と、民主党の西村まさみ参議院議員なんですが、そのときどきの勢いのある党に食い込んで組織代表を議員にするという点で結構画期的なんですよね。

 2004年には、日歯連事件を起こして当時の会長が有罪判決を受けるなど、医療界と政界の関係というのは恣意性の強い意志決定をベースにしている分だけ、どうしても金の授受も含めたややこしい話になりやすいのであります。

日歯連事件

歯科業界を取り巻く数々の問題

 さて、この手の業界の利益誘導や組織代表というのは、どういうものなんでしょう。従来の自民党政治全盛期には、建設から日本医師会まで各業界の利益代表や組織代表が参議院に送り込まれることもあれば、すでに通った若手議員を当選の浅いころから面倒を見て囲い、ある種の族議員にして育て上げるというのが通常でありました。

 しかしながら、政治とカネの問題が次々と浮上し、また政治資金規正法が厳格に運用されるようになると、業界を代表したり党として支援を受けて金を配るタイプの派閥政治が低迷しましたので、どうしても小口の現金を薄く広く集めるタイプの活動にならざるを得ません。

 そうなると、日歯連だけでなくさまざまな利益代表が政治に影響を及ぼそうとなり、単に特定の議員を支援して党の中の要職に就いてもらい利益誘導してもらうということがやりづらくなります。実際、日歯連がここまで資金を政治の世界に融通しなければならない理由は、社会保障費が削減されるときに真っ先に歯科治療の診療報酬が下げられる検討が進むのが嫌だからです。

 もちろん、歯科治療が適正な報酬で行われないと歯科業界が死んでしまうわけで、それまでも断続的に歯科治療の報酬が引き下げられた結果、それなりに苦労して歯学部を出て歯科医師になったのに、大学勤務医も開業医も都市部ではしんどいことになって歯科医になってもワープアになってしまうとか、保険の歯科治療を捨てて高額報酬の得られる美容・審美方面に転出する歯科医も後を絶たないわけです。

 極めつけは、クソみたいな私立歯学部が乱立した結果、まともに国家資格試験も通らないような学生を集めてきて高額の授業料を取ったりしていることでありまして、このご時勢にそんな大学要らないだろという話になるんですけど、廃校になることなく現在も存在しています。

 人口が減ってきてそこに診療報酬のパイが減っていって、社会保障費も潤沢どころではない状態で昔ながらの利益誘導を政界に対して働きかけるというのは、どうしても無理がある世界なのです。が、11年前の日歯連事件の反省もしつつ、政治と業界団体の枠組みとして、どういう仕組みが適正かは考える必要があると思うんですよね。

 今回の日歯連の問題は2010年の事案で、5年かけての立件でしたが、例えば新国立競技場の問題が出たとき、ちょうど2020年の直後あたりに何か文教族方面で炸裂したりすることはあるのでしょうか。あるいは、現在進行中と見られる事案も複数あるようで、これはこれで興味津々ですね。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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