ASEANに吹くジャズ旋風 「AYJO」が表現する未来

FUTURUS

ASEANに吹くジャズ旋風 「AYJO」が表現する未来

新しい文化が生まれる瞬間とは、つまるところ異なる国同士の知恵や発想が混ざり合った瞬間である。文化は常にハイブリッドなものだ。

既存の文化が進化を遂げる時も、その原理は変わらない。音楽はその代表例だ。言葉も習慣も違う者が寄り集まり、思い思いのリズムを奏で、ではそれを合わせてみようと相談するうちに、今までになかった斬新な作品がいつの間にか完成している。

それを新しいジャンルと定め、名前をつけるのは観客の役目だ。演奏している本人たちは、ただただ己の感性に身を任せたに過ぎない。音楽とは、まさに水の流れを追いかけるかのような創造芸術なのだ。

今年、独立行政法人国際交流基金アジアセンターが企画した『Asian Youth Jazz Orchestra(以下AYJO)』は、文字通り現在進行形で新しい文化を築こうとしている。

この『AYJO』は日本と東南アジア各国から集まった28人の若いミュージシャンで編成され、9月から10月までの間にASEAN各国で公演をする。さらに来年1月には、日本の3都市でも演奏を行うという壮大な計画を予定している。

その第1回公演が、インドネシアの首都ジャカルタで行われた。



■ 21世紀のジャズ

9月17日、ここは中央ジャカルタ・チキニ地区にある劇場『グラハ・バクティ・ブダヤ』。筆者はすでに満員になったホールの最前席で、胸踊らせながら開演を待っていた。

何しろ筆者は、中学生の頃からのジャズファンである。国際交流基金のスタッフからこのイベントの存在を聞いた時、自分のスケジュール調整のことなど一切考えずに「取材に行きます」と答えてしまった。大好きなジャズを聴くことが仕事になる。こんな素晴らしい話はない。しかも約30人からなるビッグバンドだそうじゃないか。

少人数のビバップジャズやモダンジャズも好きだが、30年代チックのビッグバンドジャズも若い頃はよく聴いていた。これはもう、何が何でも取材に行かせてもらおう。ジャカルタでの下宿先から会場まで徒歩30分の道のりが、とても軽やかに感じたほどだ。

だが結論から言うと、筆者が当初想像していた音楽はそこにはなかった。そしてメディア関係者専用席に腰掛けながら、とてつもない驚愕に襲われた。

筆者の聴いたことのないジャズが、そこで繰り広げられたからだ。そう、これは確かにジャズだ。熱せられた竜巻の中で踊るようなこのヒート感は、ビッグバンドジャズ特有のものである。だが今までに散々聞いた、古き良き姿のジャズとはまるで違う。

そこには“最先端”があったのだ。

多種多様なリズム表現、ミュージシャン一人ひとりの感情を最優先にする指揮、それでいて統率は寸分も乱さず、一度閉じた花弁がまた大きく開くかのような絶妙のアクセント。

筆者はその演奏を目前に、自問した。

「今行われているこの演奏を、どう解釈すればいいのか? 金鉱石を堀りに行ったはずなのに、出てきたのはまったく見たことのない貴金属だった。だがそれは、金よりもダイヤモンドよりもさらに美しい。さあ、これは一体何だ?」

しばらく考え、筆者はこのような結論に達した。

そうか、これが21世紀のジャズなのか!

■ ASEANの伸びやかな明日

選考オーディションをくぐり抜け、幾多の猛練習を重ねてきた28人の若手ミュージシャンたちは、それでもなお成長の最中だという。国際交流基金ジャカルタ日本文化センターの油井理恵子氏は、

「1月の日本公演では、彼らはさらに進化しています」

と、語った。すなわち9月からのASEAN諸国での演奏ツアーは、28人にとっての“武者修行”でもあるのだ。

彼らは今の時点で、音楽家として完成しているわけではない。だからこそ、その演奏には“伸びやかな明日”というものが表れている。自分たちに訪れる未来は必ず明るいものだと、全員が確信している。音楽は嘘をつかない。演奏者の心の中身が、そのまま観客に伝わってしまう。

東南アジアの国々は、経済面で大きな注目を浴びている。堅調なGDP成長率、旺盛な消費、増え続ける労働者人口。そこに“閉塞感”という言葉はなく、代わりに具現化された“希望”が空を照らしている。『AYJO』のメンバーは、そのような光景を偽りなく表現していたのだ。

演奏が終わると、観客は席を立ち会場を後にしようとする。だが一人の例外もなく、誰もが興奮の余韻に頬を赤らめている。女の子は隣の席に座っていた友人に「あの演奏、最高だったね!」と言わずにいられない。若い男は座席から立ち上がれず、ただ溜め息をつき誰もいなくなった舞台上を見つめている。彼の脳内では、すでに何度もアンコール演奏が行われている状態だ。

そうしてようやく家路につき、自宅の玄関をくぐる。しかしその心は、いつまでもグラハ・バクティ・ブダヤに置き忘れたままだ。結局、『AYJO』の公演を観に行った人々はこう考えることになるのだ。

「もう一度聴きたい!」

■ 日本公演は来年1月

『AYJO』の日本公演のスケジュールは以下のとおり。

来年1月に行われる日本ツアーは、先述の通り3都市の周遊だ。東京、福島、宮城。これらの入場チケットは『チケットぴあ』での取り扱いが決まっており、コンビニでの前売り券予約が可能。

・東京公演
2016年1月28日 開演午後7時
めぐろパーシモンホール・大ホール

・福島公演
2016年1月29日 開演午後7時
いわき芸術文化交流館アリオス・大ホール

・宮城公演
2016年1月31日 開演午後7時
七ヶ浜国際村ホール

これらの公演の詳細は、以下にリンク付けした国際交流基金アジアセンターのウェブサイトを参照していただきたい。

【参考】

※ AYJO – Facebook

※ Asian Youth Jazz Orchestra 東南アジア&日本公演開催! – 国際交流基金アジアセンター

「ASEANに吹くジャズ旋風 「AYJO」が表現する未来」のページです。デイリーニュースオンラインは、海外などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る