日本のインドネシア鉄道“失注”は中国の無料モデルが原因 (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

日本側は反省する必要なし!?

 しかしながら、現地報道をつぶさに見ると、ほとんど無償で中国がインドネシアで高速鉄道を建設するという、大規模経済援助そのものに内容が振り替わっているのは気になります。

Japan Says China Wins Indonesia High-Speed Rail Contract

 もしも、一連の報道の通り鉄道建設のためのインフラ投資負担を減らすため、中国がインドネシアにほぼ建設費用の全額を負担することを申し出ていたのだとすれば、日本はそのような値下げ競争に身を捧げる必要も無いと思われます。diplomatによると、中国は55億ドル、日本は62億ドルの入札金額だったと報じられていますが、同時に日本の提案は日本とインドネシア政府による低金利ローンなのに対し、中国はかかる予算の主要部分が中国政府のローン、すなわちインドネシア政府の腹は建設着工時点では痛まないという前提になるわけです。

 ただ、これらのシンジケートローンは実際の建設計画が完全に貸し手側、中国政府の意向で左右されることをも意味します。なんでこんな決定をしたのでしょう、自国のインフラを手がけるのに自国の予算からローン出さないって、まるで日本の高度成長期が終わった直後の地方交付税みたいなものじゃないですか。

 インドネシアでは往々にしてこのような「政治的に鼻薬をかがされた結果の決定」は、汚職や横槍、利益誘導の果てに失敗しており、中国のコンストラクターが入札した造船所や港湾など、中規模以下の無償開発援助も手を付けるまでは早くとも完成に至らないプロジェクトがゴロゴロしています。

 どうせ日本の計画を下敷きに受注されたプロジェクトですし、ほぼ無料というような将来をあまり見越さない受注活動が繰り広げられているのであれば、日本側にさほどのメリットはありません。本当に期日どおりに完成させられるのか、ゆっくり見ているのが一番日本にとってふさわしい態度のように思います。

 個人的には、値引き競争に引き込まれて赤字を垂れ流す決定をするよりは、間合いを見てきちんとした入札条件を出した日本が本件で恥じることはそれほど無いんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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