【未来予想図2020】ホンダが考える「スマートモビリティ」EVとFCVそしてPHEVの将来は?

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【未来予想図2020】ホンダが考える「スマートモビリティ」EVとFCVそしてPHEVの将来は?

※ 前編はこちら:【未来予想図2020】ホンダが考える「スマートモビリティ」、クルマだけでなくエネルギーも作る
http://nge.jp/2015/10/21/post-120044

自動車メーカーのホンダが考える2020年以降の『スマートモビリティ』とは何か?

前編では、「クルマだけでなく、エネルギーも作る」といった事業構想について紹介したが、後編はEV(電気自動車、以下EV)やFCV(燃料電池車、以下FCV)、PHEV(プラグインハイブリッド車、以下PHEV)などの将来に言及。それぞれが、今後どのように普及していくかを検証する。

今回もお話を伺ったのは、ホンダで超小型モビリティ『MC-β(エムシー ベータ)』の開発や『スマートモビリティ』の事業化を担当する、本田技研工業・スマートコミュニティ企画室の岩田和之氏だ。

■ 超小型EVの都市と地方での使い方

以前、他媒体で、ホンダさんが「超小型EVは、都市より地方の方にマッチする」と考えていらっしゃるという意見を拝見したのですが、やはり交通網が発達した都市より、地方での普及をお考えなのでしょうか?

<地方は、今ガソリンスタンドが次々となくなっていますよね。既存のインフラが維持できなくなってきている。

ですが、『MC-β』など超小型EVなら、スタンドでガソリンを給油する必要はないんです。電気は自宅で買えるから、インフラはすでにあるんです。あれくらいのクルマの電気なら、十分に供給できる。近所の畑など、近距離の移動なら『MC-β』でも十分だと思います。

地方でも、やはりエネルギーとの連携は重要ですね。太陽光発電だけで『MC-β』を走らせている宮古島市の実証実験(前編参照)は、そのいい例です。

電気を家で作りそれをクルマに使う、“家産家消”という考え方は十分にあると思います。>


■ カーシェアリングに超小型EVを使う

逆に、都市では使えないのでしょうか?

<答えが全くないとは思っていないです。さすがに、(『MC-β』を)ファーストカーにしようという人はいないと思いますが(笑)。都市で可能性があるのは、『カーシェアリング』ですね。

今、東京など都会では、駐車場の問題などでクルマを持つこと自体が困難になってきています。また、地下鉄など公共の交通機関が発達しているので、移動にクルマが絶対に必要ではなくなってきている。ただ、ちょっとした移動では、やはり必要な場合もある。

そこで、超小型EV。車体が小さいので渋滞対策になるし、普通のクルマを2台停める駐車スペースに3台は停められますから、これをシェアすることで駐車場スペースの削減にもなります。

『カーシェアリング』で、特に重要だと思っているのが、我々が『リモートドライブ』と呼んでいる半自動運転です。

例えば、ドライバーが降りた後に、クルマが自動で動き、隣のクルマのドアとの間隔をギリギリまで詰めて駐車する。人が乗っていないから、ドアは開かなくても大丈夫なんです。で、乗る時にはまた、自動で動いてドライバーを迎えに行く。そうすれば、駐車スペースをかなり削減できます。

あと、カーシェアで問題になるのが、例えばA地点とB地点で、どちらか一方にクルマが溜まってしまうこと。他社がやっている例では、学生などをアルバイトで雇って移動させていますが、それだと人件費が掛かる。

我々は、こういったクルマの偏在解消も、『リモートドライブ』でやることを考えています。『カルガモ走行』と呼んでいるんですが、一番前のクルマにだけドライバーが乗っていて、その後ろに2から3台のクルマが、前のナンバープレートを認識して自動でついてくる。そうすることで、1人で多くのクルマの偏りを解消できるんです。

あまり知られていないのですが、ホンダは、20年前にこういった超小型EVを使った都心におけるカーシェアリング(ICVS)を提案しています。

ドライバーがクルマを降りて返却手続きをすると、クルマは『リモートドライブ』で隣のクルマのドアぎりぎりまで詰めて駐車スペースへ。ゲーテッドエリアで人が介在しないため、安全性も問題ないです。自動運転によるカルガモ走行で、クルマの偏在解消をするアイデアも、当時すでにありました。

(20年前の)動画では、返却時はカード認証を使っていますが、今ならスマートフォンでできるでしょう。EVの充電も充電コネクタを使っていますが、将来は非接触充電が可能になることも考えられます。

『MC-β』の前に開発した『マイクロコミュータープロトタイプ』でも、一昨年にこういった『リモートドライブ』のデモを(東京モーターショーと併催のスマートモビリティ2013で)発表しました。

これは、要は20年前からあったアイデアを、今の技術でやっているということ。都市でやるとしたら、我々はこういうシステムだと思っています。

実現すれば、環境に配慮しつつクルマの稼働率を上げる、ひいてはコストを下げることも可能になると思っています。>



■ 都市の近距離移動はEV、遠距離はFCV

一方、FCV(燃料電池車)についてはどんなイメージをお持ちだろうか?

<EVは、電気で走るだけなので、効率からすると水素を燃料とするFCVよりはるかにいいです。ただし、遠距離を走るのは苦手ですね。

EVで航続距離を伸ばそうとすると、バッテリーをたくさん積まなければなりませんが、それだと重くなるし充電時間が延びる。ガソリン車や、FCVが3分程度でチャージできるのに比べ、EVは何時間も必要です。

急速充電器を使うという考え方もありますが、やはり3分で充電して長距離を走るというのは難しいと考えています。

長距離を走るのであれば、FCVの方が断然有利ですね。ただし、燃料電池に必要な水素の補給には、水素ステーションなどインフラの整備が必要です。

EVは、前述の通り、家で充電できるので、近距離を走るコミューターとして考えれば、ある意味インフラはもうある。

FCVは、国も推進してはいますが、インフラの整備にはまだ時間がかかると思います。>


■ 新しい楽しみ方ができるPHEV

FCVの普及に時間が掛かるとすると、それまでの間はどんなクルマが主流になるのだろうか?

<PHEV(プラグインハイブリッド車)は、ひとつの方向性ですね。あれは、基本的に普通のクルマなので、遠距離も問題なく走れますからね。

ただし、CO2削減のために電動走行距離を伸ばそうとすると、バッテリーを増やす必要がある。すると、重くなるので燃費が悪くなるんです。

ハイブリッド車は、(PHEVでも)ブレーキを踏んだ時に出る回生エネルギーで燃費を稼いでいる。だから、高速道路でずっとアクセルを踏みっぱなしだと、燃費は良くありません。アコードPHEVは、そこを解決し、高速道路走行時はエンジンだけで走るため燃費がいいんです。>

<あと、PHEVでは面白い乗り方ができます。

例えば、(栃木県にある)日光のいろは坂を登るとしましょう。あんな長い登り坂を走ると、PHEVの電池は切れてしまいます。でも、そこで充電する必要は実はない。

帰りの下り坂で回生エネルギーがバッテリーに溜まり、ふもとに着く頃には宇都宮市内まで電動走行ができるくらい充電されているんです。

普通のHEV(ハイブリッド車)だと、バッテリー容量が小さいから無理なんですが、より容量が大きいPHEVならこれが可能。新しいクルマの楽しみ方ができるんですよ。>

■ PHEVは今後も増える?

では、PHEVは今後も増えるのだろうか?

<出てくると思いますよ。ホンダでもいろいろと考えています。ただし、やはりバッテリー容量が大きくなる分、価格は高くなってしまう。その辺りは、お客様にどう価値を提供できるかや、お客様がその価値を認めてくれるか次第ですね。

あと、問題は世界的な排ガス規制。

欧州では、2020年に従来よりかなり厳しいC02規制が始まります(各メーカーが販売した新車の総平均CO2値を130g_CO2/km以下から95g_CO2/km以下へ)。そのために欧州メーカーは、EV・PHEVなどを作らざるを得なくなっています。

また、アメリカでも、カリフォルニアで施行されているZEV規制(CO2排出量に関する厳しい規制)が、今後は全米に広がっていくでしょう。

日本でも、COP21(地球温暖化対策の国際会議、12月にパリで開催予定)次第では、さらに規制が厳しくなることは十分にあり得ます。

こういった規制は、要するに、前にも言ったように“化石燃料を燃やすな”と言っているようなものです。そうなると、基本的にガソリンエンジンを使っているPHEVは、そもそも法規制に要求されていることの完全な答えにはならないんです。

もちろん、しばらくの間は、EVを1台普及させるよりも、数的に多いガソリンエンジン車の燃焼効率を上げる(燃費向上の)方が、トータルのCO2排出量は減ります。だから、当面の間はガソリンエンジン車の需要は変わらないでしょう。

一方で、ガソリンエンジン車の燃費や排ガス排出量の改善は、もう限界に近いところまで来ていることも確かです。

エンジンは雑食なので、ガソリンだろうと、水素だろうと、アルコール(バイオエタノール燃料)でも燃えるわけです。水素を使う内燃機関は、NOXは出るけれどCO2は出ない。

エンジン自体がなくなると思いませんが、ガソリン車を広めることは、間違いなく求められていないと思います。>


■ 最終的にはEVとFCV?

では、最終的に行き着くのはEVとFCVなのだろうか?

<EVに乗るとガソリン車には戻れないという人も多いですね。どんなクルマでも高級車に感じられる(笑)。

前にも言いましたが、(近距離を走る)コミューターとして考えれば、家などで電気を充電できるのでインフラもある。

(超小型モビリティという新カテゴリーを作るという)国交省の認定制度の動きは、これも前述の通りまだ読めません。でも、国も2020年の東京オリンピックを見据えて、何らかのことを考えていると思います。

FCVは、まだまだ(水素ステーションなど)インフラの整備に時間がかかるでしょうが、(国の推進などで)追い風は吹いています。

今後は、(MIRAIを販売した)トヨタさんやホンダ以外でも、いろんなメーカーさんが出してくるでしょうね。>

前編でも紹介した通り、クリーンで効率がいい“クルマ”だけでなく、水素ステーションなど“エネルギーも作る”ことで、新しい社会の構築を目指すホンダ。

<我々の大義は、お客様の生活に、新しい価値を創造させてもらうことです。そのためには、先陣を切ってやったことが真似されても構わないですね。>

と語る岩田氏。

自動車メーカーの枠を超えたホンダの新たな挑戦に、今後も注目したい。

【動画】

※ 東京ゲートブリッジ開通式典 – YouTube

【取材協力】

※ 岩田 和之 – 本田技研工業株式会社

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