消滅する熱帯雨林 「焼畑農法」に悩まされるインドネシア

FUTURUS

消滅する熱帯雨林 「焼畑農法」に悩まされるインドネシア

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今のインドネシアにあたるスマトラ島やジャワ島は、かつて東南アジアの食料庫だった。

豊かな森林と温暖で降水量に恵まれた気候、栄養分に満ちた土、そして島自体の広大さ。コメの三大品種の一つであるジャバニカ米を生み出し、上質の絹や木綿を紡ぎ、数え切れないほどの家畜を育てていた。

だがそれは、過去の話である。今や食糧の完全受給は達成しておらず、農業の機械化からも完全に取り残されてしまった。21世紀も15年を経た今でも、農耕牛が第一線の現場で働いている。

「月に50ドル稼げるか否か」という環境で生きるインドネシアの農民にとって、ヤンマーやクボタの農業機械は夢のまた夢、遙か遠い場所にある憧れだ。中央政府からようやく支給されるのは、日本では「家庭菜園用」と謳われている手押し式耕うん機である。大型トラクターなどはテレビでしか見たことのない農民も、多く存在する。

インドネシアの農業は、オランダ植民地時代から殆ど進化していない。開墾の手段も前時代的だ。何しろ、スマトラ島では未だに焼畑農法が行われているのだから――。

■ 煙に包まれた国

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1ヶ月ほど前、筆者はシンガポールの友人からこんなメッセージをもらった。

「君の国の医療用マスクを、できるだけたくさんシンガポールに持ってこられないか」。

その友人は、どうやら真剣らしい。

“世界一のマスク好き”として知られる日本人が作る製品は、世界中の医療現場で採用されている。友人曰く、有毒成分をカットできるマスクがどうしても必要だという。

シンガポールは、インドネシアのスマトラ島から飛来する煙に悩まされている。大規模な焼畑農法による煙害だ。

シンガポールにも届くそれは、政府が警報を出すほどのレベルにまで達している。

F1グランプリのためにシンガポール入りしたレーサーのジェンソン・バトンも、この煙害に懸念を示していた。開催が中止されたスポーツイベントも少なくない。

当然これが国際問題にならないわけがなく、シンガポール政府は数年も前からインドネシア政府に抗議の声明を発表している。だが、インドネシア側は決定的な解決策を持っていない。あまりに広大なスマトラ島全土に監視の目を行き届かせるのは、不可能である。

焼畑農法は、肥沃な農地を作るのに最も手っ取り早い方法だ。そこにアブラヤシのプランテーションを作るのだが、そもそも熱帯雨林を炎上させるという行為は危険極まりない。

それに野焼きで作った農地が痩せれば、それ以上の手段はない。また森を焼き、新しい農地を作り、そこが痩せれば再び……の繰り返しだ。

焼畑農法の当事者たちは、異口同音に「我々が生きるためにやっている」と語る。だが焼畑農法に代わる手段の研究を怠っている事実は、もはや口先ではごまかせない。

何しろ、スマトラ中部に位置する都市プカンバルは、シンガポール以上の濃い煙に包まれているのだ。

現地市民は、もはや仕事どころではない。学校も休校措置が取られ、航空便も一斉にキャンセルになった。農民が生きるためにやってるはずの農法は、都市部の市民を大いに苦しめている。


■ 住処を失くした動物たち

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苦悩しているのは人間だけではない。スマトラの熱帯雨林には、多くの希少動物が棲んでいる。

ここにはスマトラゾウ、スマトラサイ、スマトラタイガー、オランウータンなどが生息している。だがあと10年もすれば、これらの動物は動物園の中でしか見られなくなるかもしれない。

無計画な焼畑農法は、今この時も動物たちの住処を奪っている。火攻めで行き場を失ったオランウータンが、ついに人間の住宅地に現れたというニュースもある。

これを見て分かるのは、農業というのはそもそもが自然破壊行為であるということだ。

「農業は自然環境に優しい」というのは幻想か政治家の戯れ言で、人間にとって有益な植物だけを植えるという行為が自然現象に相反する。

だが、だからといって、一切の農業をやめるわけにもいかない。人類の文明は常に農業と共にあるからだ。そうであるからこそ、現代の農家は「いかに自然環境と調和した農法を行うべきか」ということを毎日思案している。本来なら。

そういう意味で、やはりインドネシアは中央集権的な国である。庶民が自ら解決策を考えようとはせず、悪いことはすべて政治に押し付けてしまうその姿勢。

問題の根源は、やはりそうした態度にある。

■ 真っ白な新聞

インドネシア軍(以下TNI)は、年々軍事予算を大幅に拡大している。ドイツからレオパルド2戦車を100両単位で購入したばかりで、最近では空軍戦力の増強にも興味を示している。

どうやら、旧式化したF5EタイガーIIをスホイ35に更新したいらしい。

だが、TNIはどうも最前線で活動する兵器ばかりを気にかけるきらいがある。

軍隊の9割方は兵站任務、すなわち後方支援を担っている。にもかからわず、なぜかTNIは輸送機の充実をいつも遅らせる。

そのためにフォッカーF27がいつまでも退役を許されず、3年前に墜落事故が起こるまで騙し騙し飛んでいるような状態だった。

そして此度の森林火災が大きくなると、TNIはその幅広い国土に見合った数の大型輸送機を持ち合わせていないことに気付いた。上空から消火剤をばら撒くための飛行機が、不足している。

だから日本を含む4ヶ国に、機材の支援を申し入れた。

だが日本政府は、消火剤の提供は約束したものの航空機の派遣は見送った。それはそうだろう。地元の軍隊ですら手に負えないのだ。自衛隊を派遣しても、できることなど限られる。

はっきり言えば、手詰まりなのだ。あとは本格的な雨季が到来するのを待つしかない。

そんな状態に苛立ち、ついに怒りの声を挙げたのはマスコミだった。

現地新聞『リパブリカ』の10月8日付発行紙は、全国の市民を驚愕させた。トップ面が霞がかって、文字を読むことができない。何やら文字が書いてあるのは分かるが、全体的にはほぼ真っ白の紙面である。唯一、煙の中を通学する子どもの写真だけがはっきり掲載されている。

この衝撃のトップ面を考えた記者、そして許可を出したデスクの英断にはただただ感服するのみだ。この記事はインドネシアの報道史に永遠に刻まれるだろう。

だが本当の問題は、インドネシア国民のこれからの行動である。焼畑農法を止めるのは、中央政府ではない。国民一人ひとりの意識が、この国の農業を変えるのである。

市民が自ら考えない国に、明るい未来はないのだ。

【参考・画像】

※ バトン「シンガポールは煙い」 ヘイズの健康被害を心配 – AUTO SPORT Web

※ インドネシア森林火災 オランウータンも大きな被害 – インドネシアニュース

※ Ini Cerita Redaksi “Republika” di Balik “Koran Asap” – Kompas

※ Patryk Kosmider / Shutterstock

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※ denkei / PIXTA

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