【未解決事件の闇21】女性編集者失踪・遺体を遺棄した現場~海・後編 (2/2ページ)
当初は、Xが無灯火で船を出した引本港から出る釣り船を30分か1時間ほど船頭付で借り、案内してもらおうと思っていた。引本港には釣り船業者がいくつか存在しているので、そんなに難しい事ではないだろう。そう思っていた。
船を貸してくれたのは湾の最奥部の集落にある釣り業者だった。海上の筏や手こぎボートから外洋に出ての本格的な船釣りまでを手がけている。普段船をこいだりしないのに、いきなり片道5キロをこぐ自信はない。かといって外洋に出る漁船は大きすぎる。ならば正直に相談してみよう。
「すいません、船をお借りしたいんですけど、釣りが目的じゃないんです。引本の集落付近まで行って帰ってくるだけでいいんです。15年ほど前に起こった伊勢の記者失踪事件というのがありまして、僕はその事件を追っているライターで、彼女の知人の者です。彼女がこの付近の海に遺棄されたという話があるので、現場に行きたいと思っているんです」
断られるかと思ったら、逆に渡りに船だった。
「ああ、それならね。エレキ船がいいよ。これなら船舶免許もいらない。引本までは少し離れてるから、予備のバッテリーもつけておくよ」
エレキ船とは聞き慣れない船だ。だが、なぜこんなに協力的なんだろう。首をかしげると、70歳ほどの店主は理由を話した。
「あの行方不明になった子、何度か見たことがあります。一人で来て近辺の店とかを調べとった。早口の伊勢弁を話しとったから間違いない。私、Xのこと、よく知ってますよ」
※つづく
Written&Photo by 西牟田靖