【未解決事件の闇21】女性編集者失踪・遺体を遺棄した現場~海・後編 (1/2ページ)
元同僚の女性のところに寄せられた情報を元に、僕はXの家から2キロほどとかなり近い引本浦という集落に出向き、彼女に教わった情報提供者の番号にダメ元でかけてみた。どのあたりにXが船を出したのか、聞いてみたかったからだ。
「突然の電話すいません。今回は辻出紀子の件で情報を寄せて下さってありがとうございます。ところでXのことなんですが、夜に無灯火で引本から船を出したって聞いたのですが本当なんですか」
相手に息をつかせないように一気に言い切った。すると、男は思いのほか友好的だった。
「いや、こちらこそ地元の者として、情報の提供をせなあかんと思いまして、連絡させていただいたんです。そんで船かどうかってことですか。それは違いますよ。引本の漁港あるでしょ。そこの岸壁に海に降りる階段がありまして、そこからボンベ背負ってXが潜っていくのを見たんです。ワシは以前、引本に住んでたんですが、眠れんときに夜中、散歩してたらたまたまXが海に入ろうとしてるのを見かけたんです。そんな夜中に、普通考えたら変じゃないですか。別件で逮捕されて無罪になったXがシャバに戻ってきたあとのことです」
「え、失踪の直後じゃないんですか。じゃあ何が目的なんでしょうか」
「岸壁の下に洞窟があって、Xはそこに遺体を隠したんとちゃうか。あいつ変態やから会いにいっとるんとちゃうかって。それこそな、スナックで気に入った女の子に別の男が手を出そうとして、Xがアイスピックを持ってそいつを刺したことがあるぐらいや。あいつ、事件以前から釣り船とかいけすの下に潜り込んだりしてトラブルが多かったんやわ」
もしそれが本当だとしたら、辻出さんがXと会ってから1年近くもたっているのだ。肉が残っていたとしても、海水によって、体はかなり膨張していたはずだ。そんな変わり果てた姿になった遺体を普通見にいくだろうか。僕は首をかしげた。だが一方、男の情報はA子が話したとされる「殺してと言ったら本当に殺してしまった。得意のダイビングで海に捨てた」という言葉と符合しているのも事実である。
引本港は尾鷲湾の奧にある支湾、その入口に位置している。北東方向に約5キロほど細長く広がっている。