【素朴な疑問】絶対零度ってナゼ「-273℃」なの?

学生の窓口

10月24日、東京で今年最初の「木枯らし」が吹きました。例年よりも少し早いタイミングなので、寒い冬になるのかもしれません。

寒さの下限である「絶対零度」は、なぜ「絶対」なのでしょうか? 物質は冷やされると運動エネルギーが減り、およそ-273℃になるとエネルギーがゼロになる計算なので、負のエネルギーが見つからない限り「これ以下」はあり得ないため絶対と表現されているのです。熱気球と反対の理屈で、気体を冷やすと体積が減り理論上「無」になってしまう、絶対零度はフシギな温度なのです。

■-273℃で「気体」は消滅する?

ものを暖めると大きくなり、冷やせば小さくなるのはご存じでしょう。これからの季節、暖房をつけても足もとは寒いまま…これは温かい空気は体積が「大きい」ため、下から上に登ってしまうからです。電車がガタンゴトンと音を立てるのも線路に「継ぎ目」があるからで、これも温度対策。鉄も高温になると大きくなって線路が延びるため、ぶつかりあって曲がらないように隙間を空けているのです。

水はなぜ湯気にも氷にもなるのでしょうか? これは水分子が持つ「運動エネルギー」の差で、

 ・暖める … 運動エネルギーが増える = 自由に飛び回る

 ・冷やす … 運動エネルギーが減る = 自由に動けなくなる

ためで、多くのエネルギーを持った水分子は飛び出して湯気になり、逆にエネルギーを失うとじっとして氷になるのです。気温や体温に使われる℃・摂氏(せっし)はこれらを基準に、氷になるときを0℃、ふっ騰したときを100℃、として定められているのです。

温度には「限界」はあるのでしょうか? 多くのエネルギーを与えれば温度は上昇しますので、理論上「上限」はありません。対して下限は「運動エネルギーがゼロ」の状態までで、負のエネルギーを与えない限り下回ることはありません。およそ-273℃でエネルギーがゼロ、つまり分子も原子も動けない状態になり、これ以下はあり得ないため「絶対零度(れいど)」と呼ばれているのです。

絶対零度になると、なにが起きるのでしょうか? おもしろいことに、気体は「理論上」なくなってしまうのです。

気体を暖めると体積が増え、逆に冷やせば縮んでしまうのは、運動エネルギーによって動き回っている証拠で、圧力が一定なら、理想的な気体の体積は「絶対温度に比例」する式であらわされます。つまり温度が0なら体積もゼロ、絶対零度では気体はなくなってしまい、再び暖めてももとには戻らず「理論上」消えてしまうことになるのです。

■「氷」は、おきて破りの逆膨張?

氷はなぜ水に浮かぶのでしょうか? 冷やせば縮まり密度が高くなって、みかけ上「重く」なるので沈んで当然。お風呂の底のほうがぬるいのも温度が低いからですが、氷は約10%も体積が増えるため、水に浮かんでいるのです。

この理由は水分子の構造にあり、H2Oすなわち2つの水素と1つの酸素がV字型に結びついているためで、冷やされて互いに近づいても収まりが悪く、液体のときよりも「すきま」が増えてしまうからです。つまり、水は温めても冷やしても「膨らむ」変わった物質なのです。

水の体積がいちばん小さいのは4℃のときで、見かけ上もっとも「重い」状態になっています。もし1℃の水と混ぜたら、温度の高い4℃の水が下になるので、液面が熱いお風呂とは逆の現象が起きてしまいます。ふだんなにげなく使っている水も、かなりフシギな物質といえるのです。

■まとめ

 ・およそ-273℃になると運動エネルギーがゼロになるため「絶対零度」と呼ばれる

 ・絶対零度になると、理論上「気体はなくなって」しまう

 ・水は4℃のときがもっとも小さく、これ以上でもこれ以下でも体積が増える

(関口 寿/ガリレオワークス)

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