吉田豪インタビュー企画:紀里谷和明「僕が仮にイケメンだったとしても何のメリットもない!」(2) (3/5ページ)
紀里谷和明はイケメンだから嫌われる!?
──いまこうやって話しててつくづく思ったんですけど、紀里谷さんがいけすかないと思われる理由としてたぶん一番大きいのが、イケメンっていうのがあると思うんですよ。
紀里谷 ……どうリアクションしていいの? 「そうですねえ!」とも言えないし、どうしたらいいかわからない(苦笑)。
──男の敵になりやすい部分じゃないですか、そこは。
紀里谷 いや、そんなつもりはないんですけどね。……これ、どう答えればいいのかね、これを肯定的に答えてもまた嫌な感じだし。否定してもね。でもメリット何もないですもんね、裏方だから。
──たぶん女性関係は苦労したことないだろ、みたいに思われてますよ。
紀里谷 いや、それ映画と関係なくないですか?
──関係ありますよ。
紀里谷 なんで!?
──モテない映画青年が監督になったら「おめでとう!」「夢が叶ってよかったね!」ってなるじゃないですか。
紀里谷 ……わかった、こうしましょう。こう書いてください。もしそうだとしてもですよ!
──仮に。
紀里谷 仮に! 僕はそう思ってませんけど、それがそうだとしても、なんのメリットもないです。
──いままで生きてきてメリットを感じたことがない。
紀里谷 ないです(キッパリ)!
──ほう!
紀里谷 だって裏方ですもん。カメラマンだったりPVやったり、関係ないじゃないですか。だったらいっそのこと俳優とかロックスターにでもなってたほうがよかったのかもしれない。……もしそうだと仮定した場合ですよ。
──『GOEMON』で監督自ら出演しても、違和感がなかったわけじゃないですか。
紀里谷 いやいやいや……あれはきわめて長い話があって。あれは、ある超有名俳優さんがカメオ出演するという話で進んでいて、ギリギリで「やっぱりダメ」って言われちゃったんですよ。さあどうする、と。
──この位置に入るレベルの役者さん誰かいるか? と。
紀里谷 そう。そのクラスの人はもうキャスティングできない。かといってエキストラレベルの人をそこに持ってくるわけにもいかない。だったら俺がそこにカメオで出たほうがプロモーションにもなるし、ちょっとだけ話題にもなるし、あともうひとつは、俺はホントに役者の気持ちがわかりたかったんです。カメラの前に立つっていうのがどういうことなのかっていうのを知りたかったっていうのがあって、それまであったセリフを全部削り、殺されるだけにしたんですよ。そんな感じです。
──そういうところも誤解されるポイントだとは思いますけどね。「イケメンが自分の映画にまで出やがったわ」っていう。
紀里谷 ハハハハハ! いや……どう答えていいのか。どう? このくだりは大丈夫?
スタッフ たしかに映画監督はブサイクなほうが好まれる傾向はありますよね。『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンとか、『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロとか、より応援される。
──オタク感があると、「仲間だ!」っていう感じが出ますよね。
紀里谷 でも俺、結構オタクですよ。
──話を聞いてるとそう思うんですけど、いままでそういうのが全然伝わってなかったじゃないですか。
紀里谷 じゃあ、どうすればいいんですか?
──劇メーション部分とかをもっと出していくんですよ(笑)。
紀里谷 ハハハハハ! でも、あの作品はいまだに画期的だなと思うんだけどね。