【冴え女シリーズ(8)】[女性小説家と男性編集者の場合]第10話(後半)「それはなぜですか?」 (2/3ページ)
冬休みが近くなった頃、私はなんとか順調に執筆を進めていましたが、加奈ちゃんの方は若干、展開に悩んでいるようでした」
藤沢「確かに家でも小説がなかなか進まないと悩んでいました」
山田「加奈ちゃんの力になりたかったんですが、私も自分の方に手一杯でなかなか会うことが出来ませんでした。冬休みに入ってからも私は自分のゼミの研究室に一日中籠もって作品を書いていました。そこに、康介君がやってきたんです」
藤沢「姉の彼氏が?」
山田「はい。私はそこで久しぶりにあった康介君に自分の作品について話したり、加奈ちゃんの近況を聞いたりしました。でも、私がお手洗いに行って戻ってくると康介君は突然用事を思い出したといって帰って行きました」
藤沢「・・・」
山田「冬休みが明けて締め切りまで1ヶ月を切った頃、加奈ちゃんは冬休み中に進展があったらしく、無事に作品を書き上げて提出していました。私は加奈ちゃんに頼まれて、提出した作品を読むことになりました。・・・そして、そこには・・・今まで私が3ヶ月かけて書いてきたモノと同じ境遇の主人公が同じ展開で物語を進めていき、私の考えていたエンディングを迎えていました」
藤沢「ま、まさか」
山田「そうです。おそらく加奈ちゃんは康介君に頼んで私のところにアイデアを盗みに来ていたんです」
藤沢「そんな・・・」
山田「その時私が騒いだところで、加奈ちゃんの作品は既に提出され、私の作品はまだ未提出。なんと言おうと盗作だと言われるのは私の方でしょう。だから私は提出までの残り3週間もない状態で1から作品を書き上げるしかありませんでした」
藤沢「典子さん」
山田「当然、結果は最悪でした。案の定、私の作品は選考漏れ、一方加奈ちゃんは最終選考まで残り、佳作として入賞。私はなぜ自分がこんなことにならなければならなかったのか、悔しくて仕方がなかった。真面目に小説を書いていた私が涙を飲んで、書けなかった彼女が私の作品を持って賞を受け取っているのが。