食べ過ぎ予防! 糖尿病専門医が教える、食事中に「はしを置く」のがダイエットに効果的な理由
さぁダイエットするぞと決意をしても、いざ食べ始めると食欲はなかなか止まりません。「食事中にはしを置く、ぼーっとするのは行儀が悪いと教えられてきたと思いますが、実は、食べ過ぎ予防にはとても効果的なんです」と話すのは、糖尿病専門医で大阪府内科医会会長の福田正博医師。詳しいお話しを聞きました。
■満腹感を得るのは、食事開始から15~20分後
福田医師はまず、満腹感を覚える脳のメカニズムについて、次のように説明します。
「食事をして満足するためには、味はもちろんですが、『満腹感』を得ることが欠かせません。この満腹感をコントロールするのは、脳の視床下部(ししょうかぶ)という部分にある『満腹中枢(まんぷくちゅうすう)』です。
食べ物を摂取すると、胃や腸で消化分解され、血液中にブドウ糖が増えて血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が上昇します。満腹中枢がこの上昇を感知して、『これ以上のエネルギーは必要ないから、もう食べなくてもいいよ』と判断すると、満腹感を覚えさせるホルモンが分泌されます。
すると食欲はストップし、『そろそろおなかがいっぱいになったなぁ』と満腹感を得ることができるのです」
「早食いをすると太る」とよく言いますね。なぜ「はしを置くこと」が食べ過ぎ予防になるのでしょうか。
「満腹を感じさせるホルモンが分泌されるのは、食事をしてから約15~20分かかることが分かっています。
ですから、食べ始めて20分以内にガツガツと早食いすると、脳が満腹を感じることができずに、もっと食べたいと思うことになります。
『早食い』は太りやすい、と言われる理由はここにあります。男子学生やビジネスマンに多いパターンですが、『ドカ食い』のもとにもなり、食べ過ぎの悪循環となります。
食事を始めてから15分ほど経ったころにはしを置き、食事をする間を3~5分ほどあけてみてください。じわじわと満腹感が満たされてきますから、自然にその後の食欲をセーブすることができます」(福田医師)
■一品ずつ食べる、好物は最後に食べる
早食い、ドカ食いは、日常的によくしています。
「健康のために、『食事は腹八分目にすることが大切』とよく言われますが、患者さんからは、『腹八分目で食事を止めるのは難しい』と聞きます。それは主に、早食いしているからです。
懐石料理やフランス料理で、一品ずつ運ばれてゆっくり食べるのは、食べ過ぎ予防の理屈にかなっています」(福田医師)
食べ過ぎを防ぐための具体的な食べ方について、福田医師はこうまとめます。
「よく噛(か)みながら食事をし、15分ほどで一度、その後途中で1~2回ははしを置き、顔を上げて遠くを見ながらぼーっとしましょう。ガツガツ食いにプチ休憩をとることができます。
誰かと一緒のときはゆっくり会話しながら、一品ずつ『間』をあけて食べると、満腹感を覚えやすくなります。
また、『好物は最後に食べる』ほうが、食べ過ぎ予防になります。先に食べると食欲が刺激されて、その後に食べる量が増えるのと、最後に食べたほうが満足を得て食事を終えることができるからです。これらを何度か意識的に行うと、食べ過ぎない習慣が身に付きます」
時間がなくて早食いをしたランチでは、おなかいっぱいに感じなかった理由が分かりました。はしを置いて食事の「間」を楽しみながら、満腹感を得るためのホルモンの分泌を待つようにしたいものです。
(岩田なつき/ユンブル)
取材協力・監修 福田正博氏。医学博士。糖尿病専門医。大阪府内科医会会長。医療法人弘正会・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。著書に『専門医が教える 糖尿病食で健康ダイエット』、『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』 (ともにアスキー新書)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書)、『専門医が教える5つの法則 「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス)など多数。