【山口組分裂騒動】6代目vs神戸は「どちらが勝っても暴力団に未来はない」(後編) (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

 実は、6代目山口組の統治システムは、国家が暴力団を締め付ける状況のなかでは、かなり優れた部類に入ると言われている。

 徹底しているのは情報管理。情報の収集は、対立組織に対しても、組織内においても徹底的に行われ、外部に対しては先制攻撃の道具となり、内部に対しては執行部批判のような動きがあれば、事前に察知して叩き潰す。

 また、忠誠心をカネの供出と本部への精勤で見極めるため、出世のために直参の幹部で115万円といわれる上納金を支払うだけでなく、盆暮や誕生日に、司6代目に少なくない金額の特別会費を支払い、ウィークデーはなるべく神戸の本部に詰める。

 最も評判の悪かったのは、ミネラルウォーターやシャンプー石鹸といった日用雑貨品の強制販売。「俺たちは雑貨屋の親父じゃない」と、不満をもらす直参がいれば、「執行部を批判するのか」と、責めた。山健組のような大きな所帯だと、水だけで月に100万円以上に達し、その負担は重く、ピンはねする弘道会への不満はつのった。

どちらが勝とうと暴力団には将来がない

 そのうえに、7代目が高山若頭、8代目が竹内若頭補佐と、既に、当代を弘道会で回していくのが確実視されるような弘道会重視の人事への反発である。

「優れた統治システム」は、人もカネも弘道会が握ることによって成り立っており、発祥の地である神戸に本拠を置く山健組など神戸山口組の主要メンバーは、とても容認できなかった。

 だが、それでも10年は耐えたのである。

 司6代目が、5代目を引退に追い込み、6代目を襲名したのは05年7月だった。銃刀法違反で下獄するのが既に決まっていた司6代目は、留守を髙山若頭に託す。

 その3か月前に直参になったばかりの髙山若頭は、舐められてはダメだと、「弘道会システム」を厳格に機能させ、それは多くの直参を息苦しくさせた。それでも我慢したのは、「親の言葉絶対で、親を裏切る『逆縁』や『逆盃』はあってはならないこと」

 という暴力団社会の約束事だったからだ。

 一般社会からドロップアウトしたアウトローたちが、長く、社会の一隅でポジション取りをすることができたのは、盃事を通した疑似的な「親子」「兄弟」を絆とし、価値基準とする集団になることで、ある種の秩序を保持していたからだ。「堅気には手を出さない」という約束事もそこには含まれた。

 だが、シノギはもちろん存在価値すら認められない暴対法、暴排条例の環境のなかで、暴力団の秩序も揺らぎつつある。

「親を裏切った」と「逆縁」を批判された神戸山口組だが、今、山口組のなかは、「親」が6代目山口組に残り、若頭以下の「子」が神戸山口組に移籍、あるいはその逆に、神戸山口組の傘下の組から「子」が抜け出すなど、乱れ切っている。

 従って、同じ山口組を名乗り、同じ山菱の代紋を使い、どちらも正当性を主張するが、今回の分裂は、どちらが「正しく」どちらが「勝利する」という問題ではなくなっている。どちらが勝とうと、暴力団に将来がないとことは確実であり、双方、互いの意地と生き様をかけた争いになっているのだ。

(取材・文/伊藤博敏)

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『山口組 分裂抗争の全内幕』(宝島社)。『黒幕』(小学館)、『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数
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