「ヘタウマ」:水野しずアート連載2 (2/2ページ)

ブッチNEWS

食ってやる。ミミズよ。

 

春と混沌の相性は抜群でジェット機が音を立てて私の後頭部を切り裂いた。弁当箱のカリフラワーがいやにアバンギャルドだった。今日。お弁当箱の中の白米ってなんか甘くない? 水蒸気ででんぷんが溶けているんじゃない、気持ちわりい。体育の時間に前の子が意味なくてんとう虫を殺した。ピキャっ。空が落ちるって感覚わからいでか。ストイックに生きるのだ。昨日購入した「ヌードポーズ集」を小脇に抱え移動教室。ストイックに生きるのだ。移動先の理科室の机にガリガリ音を立ててポーズ集を見ながらクロッキーを続けた。ストイックに生きるのだ。翌日、水野さんが理科室の机に裸の女の絵を大量に描いたらしい。あの子エロビデオ見てるらしいよってうわさ話を小耳に挟んだ。人生が裏目そのものだ。一番大きなまとまるくんを持って理科室に行ったらガリガリした絵がまだ残っていた。気持ちわりい。のたくった線がミミズ。あと根本的に私めちゃくちゃヘタクソじゃねえか絵が。理科室の机の材質と黒鉛の相性がよすぎて消しても消してもうっすら痕が消えなかった。レジェンド・オブ・ミズノは後世に春画を遺した。今日もお弁当箱にカリフラワー。生きる。生きるしかない。エロビデオ? 他人のおセックス様なんか興味ねえ。勝手にやってろ。私のイメージを鮮やかに切り裂いて更新するのは、宇宙。宇宙の、谷川俊太郎先生が、詩を書く時はストローになると仰っていた。宇宙のエネルギーを届ける真空のストロー、ストローだ。表層的なエロじゃなくてもっとあらゆるを内包した宇宙的エロ、そういった規模感のエロでありたい、エロであれ。エロにあらずんば。エロ。空のお弁当箱はエロの真逆って感じがするけどカリフラワーはエロ。宇宙規模ってちょっと難しかった。帰りファミリーマートに寄ってホームランバーを買って食べた。いやなことがあったから。夕日の赤が「復讐」の二文字を私の顔に照り返した。燃え上がれ、ガンダム及び水野。

 

それから10年くらい心が何回折れても絵だけはやめたら死だと思って描いていたら「ヘタウマ」って言われるようになった。世の中のだいぶ端っこの方かもしれないが私の絵にも居場所があったっぽい。生きててよかった。

(隔週連載)

【水野しず:プロフィール】
みずのしず…イラストレーター/漫画家/モデル。1988年12月19日生まれ、岐阜県多治見市出身。講談社が主催する女性アイドルオーディション、ミスiD2015でグランプリを受賞。カルチャーマガジン『TRASH-UP!!』等で漫画を連載するほか、モデルとしても活躍中。部活遍歴は手話部、囲碁部、切り絵クラブ(副部長)。

公式サイト:http://mizuno-shizu.jimdo.com/
ツイッター:@320_42

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