「ヘタウマ」:水野しずアート連載2 (1/2ページ)
水野しずのこれがアートだ!

高校二年生の春はまどろみと倦怠が柔らかな日差しに包まれた上に生クリームをちょっとのせたくらいスウィーティーで本格的に頭がどうにかなりそうだったから、窓際の席で新潮文庫のカバーを外して結末が全部「死」の意味ないあみだくじを作って遊んだ。結果、死。あっ。死ぬ。死? 死? 死? 死ぬじゃん。このままスウィーティーな空気をあと2年吸ったら付属の大学へ行って、就職? オフィスで? 月曜日から金曜日までパソコンとかデスクとかエクセルとか上司とかオフィスカジュアルとかタイムカードとかあみだくじとか? 頭がボンヤリして意識が拡散して近づく虚無。死じゃん。唐突に気がついて、手足の先から冷たい空気が頭の上の方までサアっと通り過ぎて、いま、いる、教室の空気の味が変わった。マグロのサクを目前に呼吸しているみたい。40人分の肉体がぶら下がっている。大変だと思ってとりあえず外の景色を目に焼き付けようと廊下に出たら、怒られた。先生、私それどころじゃないから、そういう次元での説教、根本的に無為だから。次の授業は移動教室だが無視して図書室に直行。「14歳のハローワーク」16歳の熟読。出遅れた、痛恨のミスにほぞを噛む。ほぞってここにあったんだ。奥歯から喉首筋ろっ骨の上の方の内側らへん、多分。静謐に見えていた図書館の光景が一変した。小学校の鶏小屋の近くにあった土。糞とか餌とかを処分してたせいで常軌を逸した栄養価の、栄養のかたまりの、栄養のスチームが、鼻先まで匂い立つ強烈な腐葉土。ペラペラのスコップで土を浅く掬うと、びろびろのうどんくらい大量のミミズが隙間なくひしめいていた。狂気。ミミズ>土。晴天の空。ミミズ。焼きそばパン。中古の手塚漫画から漂うすえた汗の匂い。ミミズ。コーヒー牛乳。靴下脱いで素足にローファー。チャイムの音。退路、なし。制服の布がしっとり厚くて容易じゃない。放課後三洋堂書店で「ヌードポーズ集」を購入した。絵で食う。着地点は分からないが、絵で食う。