不良格闘技「THE OUTSIDER」潜入 拳で夢を叶えた黒石高大の鮮烈な幕引き

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不良格闘技「THE OUTSIDER」潜入 拳で夢を叶えた黒石高大の鮮烈な幕引き

12月13日に東京・大田区総合体育館にて、暴走族や不良を中心としたアマチュア格闘技イベント「THE OUTSIDER 大田区総合体育館 SPECIAL」が開催された。

同イベントは、数え切れないほどのリングで活躍し、格闘王の異名を持つ前田日明さんが、格闘技を通した不良たちの更生を目指して2008年3月に旗揚げし今回で38回目の開催となる。

本大会では「THE OUTSIDER」(以下・アウトサイダー)初となる現役プロレスラー・今成夢人選手の参戦や、昨年から開催され人気を博している女子アウトサイダーによるシングルマッチ、さらに第1回大会から参加しアウトサイダーを象徴する選手として愛されている黒石高大選手の引退試合などを含めて、全36試合が行われた。

荒くれ者からセミプロまで!「THE OUTSIDER」のフォトレポート

今年の大晦日には新格闘技イベント「RIZIN」の開催ならびに地上波放送も決定しており、世間では格闘技ブームの再興もささやかれている。

そんな中、アウトサイダーにはメジャー選手らの姿は無く、リングにあがる多くは不良たちやいまだ無名のアマチュア選手たちだ。これまで、試合以外の乱闘騒ぎも幾度となく起こっている。

しかし、そんな彼らアウトサイダーたちの闘志むき出しの姿や、喧嘩を思わせる荒削りな闘いこそが、多くのファンを獲得している要因ともいえる。

アウトサイダーの創設者・前田日明の登場!

本大会の開催に先立ち、前田日明さんがリング上よりファンへ挨拶を送った。アウトサイダー年内最後の大会とあり、開始時刻である14時の段階で1階のアリーナ席は多くのファンで埋め尽くされていた。

格闘技ファンはもとより、仲間の応援に駆けつけた強面な人も多く、会場は、通常の格闘技イベントとはまた違う緊張感に包まれる。

大会序盤の激戦! KO劇から壮絶なTKOまで
長く戦うことになれていない選手たちの体力に配慮してか、アウトサイダーの基本ルールは1ラウンド3分の2ラウンド制だ。国内では珍しくないが、世界的な総合格闘技・UFCの5分3ラウンドと比べるとやや短い印象だ。

勝敗の決め方は関節技等でギブアップを奪う1本勝ち、打撃や締め技により相手を失神をさせるノックアウト(KO)

そして、レフリーストップやドクターストップ、また累積2回のダウン判定によるテクニカルノックアウト(TKO)に加え、試合中に勝敗が決まらなかった場合はジャッジによる判定が用意されている。

またアウトサイダーの試合はレフェリングが非常に厳格に行われており、ストリートの喧嘩とはまったく異なる。むしろ、繊細なレフェリングにより格闘技経験の浅い選手でもリング上で安全に試合に臨むことができる。




第2試合は壮絶な殴打戦となった結果、アウトサイダー初参戦の樋高選手が決定打を打ち込み、見事KO勝利を飾った。


写真からもその衝撃が伝わる、賀井亞選手の膝蹴りが野村将平選手にクリーンヒット。結果、0対2で賀井亞選手の判定勝ちとなった。




第8試合では、1ラウンド早々に新井悠介選手がマウントポジション(馬乗り状態)を奪い、パウンド(グラウンド状態でのパンチ)を連打。TKO勝利を飾った。

スタンディングの状態でのパンチやキックの応酬も白熱するが、総合格闘技ではグラウンド状態の攻防も見逃せない。特にTKO勝利をもぎ取るためのパウンド攻撃のラッシュは、観客も一緒になって声援を送る最も盛り上がる瞬間のひとつである。

アウトサイダーの華!ラウンドエンジェルたち



一般的に試合中のラウンドを知らせるためにリングにあがる美女はラウンドガールなどと呼ばれるが、アウトサイダーでは「ラウンドエンジェル」と呼ばれる。




格闘技イベントでありながらガチンコの喧嘩という側面をあわせもっているため、他の格闘技イベントよりも幾分、殺気だっているように感じられるアウトサイダーのリング。そんな中、彼女たちの存在はより顕著に天使のような存在感を発揮していた。



中盤戦では選手が失神!そしてプロレスラー・今成夢人選手が登場!

大会も中盤に差し掛かってくると、2階席であるスタンド席にも多くの観客が集まってきていた。そんな中、17試合目では誠哉選手が2ダウンを奪い、鮮やかなTKO勝利を披露した。



しかし、その後対戦相手の大塚一樹選手はしばらくの間リングから動けず、リングドクターが駆けつける事態に。

無事に大塚選手は立ち上がったものの、アマチュアとはいえ格闘技という命を賭けた勝負事であると再認識させられた。


第20試合には、大会前から格闘技シーン、プロレス界の両方から注目されていた、プロレス団体・DDTの映像班であり、ガンバレ☆プロレスのレスラー・今成夢人選手が登場。


総合格闘技における殴打戦の名勝負としてしられる「高山善廣 VS ドン・フライ」を思わせるような、熾烈な打撃戦を展開した。


結果は今成選手の判定負けに終わったが、山口選手と互いに清々しい表情で握手を交わした。

不良の格闘技というイメージとは裏腹に、スポーツマンシップに溢れる場面をアウトサイダーのリングでは非常に多く見かけた。

アウトサイダーの会場に集まった人々!

アウトサイダーの会場には、格闘技ファンはもちろんのこと、出場する選手を応援するために、選手の知人・友人のかたが多く押しかけていた。



タトゥーの入ったオラオラ系と呼ばれるような男子や女子のお客さんが多いが、それもアウトサイダーならではの光景だ。

会場には屈強なセキュリティが立っていたり、手荷物検査には金属探知機まで用意されているなど、ものものしい雰囲気からも、アウトサイダーに対して「イリーガルな地下格闘技」というイメージをもっている人も多いかもしれないが、あくまで不良や暴走族といったバックボーンをもつ選手が多いというだけである。

もちろん、これまでにも乱闘騒ぎが起きるなど、一般的な格闘技団体のイベントと比べるとリング外にも独特の緊張感が漂うが、そうした中で観戦するアウトサイダーたちの試合はしびれるほどに刺激的だ。

女子シングルマッチ!流血から脱臼まで壮絶な女子の闘い

第22試合からは女子シングルマッチが3試合行われた。初戦には、悪羅悪羅系ギャルとしてモデルなどの活動で知られる塚本波彩さんが登場。勝利を挙げた初戦に続き、これで2回目の参戦だ。






塚本選手の健闘虚しく、キックボクシングの経験を持つ華麗DATE選手が判定勝ちを収めた。塚本選手の流血跡からも分かるとおり、男子の試合に比べても引けを取らないほど女子アウトサイダーも全力の格闘技を行う。


次の池田聖奈選手と真理DATE選手の試合では、池田選手がマウントポジションを取り果敢にパウンドを繰り出すも、真理DATE選手のキックに苦戦し結果はドロー。


続いて、アウトサイダーでの戦績は3戦2勝1敗と、女子アウトサイダーとして奮闘している山崎桃子選手が登場。対する華DATE選手は18歳という若さながらも、すでにアウトサイダーでは1勝をあげている。


女子シングルマッチの最終戦となった24試合目。開始早々、激しい攻防を繰り返す中で山崎選手の肩がまさかの脱臼。山崎選手の講義も虚しく、レフリーストップにより華DATE選手が勝利を収めるかたちとなった。

大会のラストを飾る!アウトサイダーの名選手・黒石高大の引退試合

本大会の最終試合、そしてメインイベントとして黒石高大選手の引退試合が行われた。黒石選手はアウトサイダーの第1回大会から参戦。キャリアのはじめは鳴り物で参戦するも負けがこんだ上、仲間が立て続けに乱闘を起こすなど、何かと騒動を呼んだ黒石選手だが、その後は着実に実力とともに戦績も伸ばしていった。

現在はテレビドラマや映画など俳優としてもキャリアを積んでおり、今回の引退は俳優業に専念するためだという。


その活躍は不良がアウトサイダーという格闘技の場を通じて、華やかな夢を掴み取るという、まさにアウトサイダードリームの象徴でもあった。そんな黒石選手の引退試合に、集まったファンはこの日一番の盛り上がりをもって迎えた。

対戦相手を務めるのは、戦友・啓之輔

対戦相手の啓之輔選手も、当日までのアウトサイダーの戦績は、26戦18勝8敗(プロ戦含む)と、アウトサイダーの歴史を示す闘いの数とともに、圧倒的な勝ち星を誇る人気選手だ。

黒石選手が「最後の相手はこの人しかいない」と語ったことに対し、啓之輔選手も「俺もそう思っていた」と返したという。そんなアウトサイダーを象徴する2人の試合は意外な展開を迎える。

黒石高大引退試合のゴングが鳴らされる!

試合開始早々から、激しい攻防を展開。ほぼ同時に蹴りを繰り出し、激しくぶつかり合う両者。黒石選手の右ハイが入り、啓之輔選手が倒れるも有効な追撃ができずに終わる。


啓之輔選手の猛打から両者がもつれ気味に一気にグランドの攻防へ。すぐさま、啓之輔選手が黒石選手の首を掴み取る。一瞬のスキを見逃さず、一気にフロントチョークを決めにかかる。

結果、1ラウンド1分ちょうど、フロントチョークにより、失神寸前まで粘るも、ついに啓之輔選手が勝ちを収める。

黒石高大の男泣き! 格闘技ならではのドラマがある

勝利者に与えられるメダルを受け取ったのち、啓之輔選手が黒石高大選手の健闘、そしてこれまでの活躍を讃えた。「こいつがアウトサイダーを引っ張ってきたんです!!」という啓之輔選手の言葉に、異を唱える者がいるはずもない。

あっけない幕切れにも見える試合だったが、黒石選手は、必ずしもその強さでファンを魅了してきたわけではない。アウトサイダーのリングでは、5回目の参戦でやっと白星を勝ち取った黒石選手。憎めない人柄と、喧嘩屋だった彼が格闘技を学びアウトサイダーのリングで成長しながら生み出してきた数々のドラマがあった。

互いにアウトサイダーの歴史を象徴する存在であり、格闘家として拳を交わす本人たちにしかわからない深い絆で結ばれた戦友・啓之輔選手自ら、格闘家としての「黒石高大」に引導を渡した鮮烈な瞬間だった。



涙を浮かべながらも凛としてリングに立っている黒石選手の姿は、アウトサイダーとしてだけでなく、俳優としてこれからの将来をしっかりと見据えているように感じられた。

母への感謝を述べ、最後までファンや関係者に挨拶をして回る黒石選手の姿がそこにはあった。

黒石のお母さんはシングルマザーで、離婚直前に子供を家の外に置いて夫婦ゲンカして、黒石は妹を抱いて泣きながら外で待ってて、最後は結局刑務所に入って黒石はおばちゃんに育てられるんだけど、それでも黒石の引退にあたっての最後の言葉は。「俺を育ててくれてありがと♡」なんだよね…。

— tatsuyakay (@tatsuyakay) 2015, 12月 13



アウトサイダーは現代版「明日のジョー」を探すという前田日明さんの思いもあり旗揚げされたイベントだ。

格闘技経験がない者でも才能と努力次第では拳ひとつで成り上がることができるという、漫画のようなサクセスストーリーを叶えられるのがアウトサイダーのリングの魅力である。

すでにアウトサイダー本大会は2016年3月27日(日)に東京・ディファ有明にて開催されることが決定している。観戦はもちろん、2016年1月4日(月)より選手募集が開始されるので腕に覚えのある猛者はぜひとも応募してみてほしい。
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