月刊化した「水中ニーソ」撮影現場に密着! 水中メイクのコツも

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月刊化した「水中ニーソ」撮影現場に密着! 水中メイクのコツも

浮遊でも、無重力でもない、水中だからこその表現がある……ビジュアルアーティスト/デザイナー/映像クリエイターである古賀学さんのプロジェクトとして人気を博す「水中ニーソ」。競泳水着×ニーハイソックスの女性モデルを水中で撮影した写真たちは、これまでにも3冊の写真集にまとめられた他、現在は月刊のミニ写真集としてリリースされています。

女性向けアパレルブランド「feast by GOMI HAYAKAWA」や、競泳水着コスチュームブランド「REALISE」とのコラボレーションなどでも展開を続ける水中ニーソプロジェクト。KAI-YOU.net編集部は今回、最新作の撮影現場を独占レポート!

撮影風景をはじめ、古賀学さんやモデルを務める女性たちへのインタビュー、メイク担当さんに聞いた水中ならではのメイクのポイントなどをまとめてお届けします。

文:松本塩梅 写真:松本塩梅、にいみなお(水中写真は水中ニーソ制作スタッフ)

モデル優先の撮影現場は和やかな雰囲気

2015年12月23日、朝食と打ち合わせを済ませた一行は、神奈川県某所にあるプール併設のダイビングショップへ。水中ニーソの撮影は古賀さん、モデルだけではなく、ライティングやオフショット撮影を兼ねる安全確保のためのスタッフ、メイク担当者、現場サポートスタッフと常時7〜8人ほどのチームで稼働しています。



撮影を通じて感じたのはモデルへの徹底した配慮。古賀さんはモデルに「無理だけはしないように!」と伝えており、撮影中の安全の確保、合間に食べるお菓子やスープの用意、プールの室温が下がらないように控室とのドアのすばやい開け閉めを徹底するなど、撮影に臨むモデルのことを第一に考えています。チームの連帯感と安心感が作品づくりにおける土台となっているようです。



今回は真縞しまりすさん、まさじさん、えみりさんのモデル3名を11時から17時の撤収まで順次撮影。モデルの体調と特性によって1回の撮影は30〜60分に区切られますが、古賀さんはほぼ水中にいて撮影を続けています。

「水中ニーソ」撮影現場3

撮影機材はCanon EOS 7Dに水中撮影用にカスタムしたハウジングを装着。モデル撮影に特化した歪みを抑えるカスタムを施しています。



プールの室温は汗ばむほどに保たれており、この日の水温は30度ほど。そう聞けば温かく思えますが、数十分に及ぶ撮影直後のモデルさんはみんな陸に上がると体の芯からの冷えで震えてしまっていました。真縞しまりすさんは「水中ニーソをやった人にしかわからない寒さがある」と言います。

水中ニーソの“秘蔵っ子”、えみりさんの撮影スタート!
「水中ニーソ」えみりさん

この日の撮影はえみりさんから。ピンク×ホワイトの競泳水着「REALISE N-060」に、同じくピンク×ホワイトのボーダーニーハイの組み合わせです。初のピンク水着に「恥ずかしい……」と口にするえみりさんでしたが、現場では「似合ってる!」と絶賛の声。

浮遊でも、無重力でもない、水中だからこその表現がある……。水中ニーソの現場に密着してきまんた! これが「水中ニーソ」だ!! #kai_you #kneesocks #水中ニーソ #撮影 #レポ #ニーソ #きゃるん #かわいい #古賀学 #えみり #まさじ #しまりす

KAI-YOUさん(@kai_you_ed)が投稿した動画 - 2015 12月 31 7:13午前 PST




撮影中には時折カメラの液晶モニタをのぞきこみ、古賀さんとえみりさんはイメージを共有。撮影後にどのような話をしたか聞くと「ピンクカラーの水着は正面だとのっぺりして見えるから気をつけつつ、かわいい脇のラインが見えるようにとか、身体を反ると足が長く見えるとわかったのでそれを狙うようにとか」と細かな発見を積み重ねていたようです。

「水中ニーソ」えみりさん2

水深4.5mのプールでは古賀さんがえみりさんの周りを泳ぎながら撮ることもありますが、その間、えみりさんは素潜りでポージングを続けます。1テイク30秒ほどの潜水を続ける撮影は、想像するだけでもハードさが伝わってきます。

「水中ニーソ」えみりさん3

空気タンクを背負っての撮影が始まると、スタッフは全員潜りっぱなしの状態に。ポーズを替えつつ撮影を続ける様子は、陸上でのグラビア写真と変わらないように思えますが、水中ニーソならではのテクニックや苦労があるようです。

「水中ニーソ」えみりさん4

えみりさん曰く「息をたくさん吸うと浮いてしまいますから、どれくらい吐くかが大事なんです。体が沈みつつ息も保つようにするには体感で覚えるしかありません。なによりプールの『中層』に居続けるのが難しくて。タンクを背負うと、今度はポーズを取る時に重心が後ろに引っ張られちゃって大変なんです」。

水面ギリギリに浮いたり、水底に沈むよりも、写真映えのする“中層”で体をキープしてのポージングが最も難しいのだそう。ここが水中ニーソモデルの腕の見せ所というわけです。

「水中ニーソ」えみりさん5

えみりさんはTwitterで自ら古賀さんに志願して水中ニーソモデルに。3歳から18歳まで水泳を続け、水泳とライフセービングのためにオーストラリア留学も経験し、日本での50m平泳ぎ全国4位に加え留学時代には50m平泳ぎオーストラリア2位の実績を持っています。

それでも中層のキープやポージングの難しさなどを感じることが多いそう。ただ、現場からは「水中ニーソの秘蔵っ子」との呼び声もあり、今後多くの作品で目にする機会が増えることでしょう。

「今日はかわいいまさじさんを撮る!」がテーマ
「水中ニーソ」まさじさん

続いて水中に潜ったのはまさじさん。可動式『メタルギアソリッド』雷電コスプレなどでも有名で、KAI-YOU.netでも以前にインタビューをさせていただきました。

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実はもともと泳ぎが得意ではなかったそうですが、ダイビング講習などを経て水中ニーソモデルができるようになったという努力の人でもあります。

この日は、Speedoの白い競泳水着にピンクのフルウィッグという出で立ち。「今日はかわいいまさじさんを撮る!」が古賀さんのテーマで、ポージングの指示も「『きゃるん!』な感じで」。

「水中ニーソ」まさじさん2

普段はクール系のコスプレも多いまさじさんですが、この日は指示通りに可愛さを強調したポーズや表情で魅せてくれました。

まさじさんは「やっぱりウィッグは難しいですね。特にウェーブやロールがかかっているものは毛束感が出ちゃう。水中ならではのファサッー!って髪の動きを出すためには新品でストレートなものがいいのかな……」と思案顔。古賀さんとモデルが一緒にトライをしながら作品制作を続けている様子を垣間見ました。

「水中ニーソ」まさじさん3

普通の撮影と水中撮影との違いを聞いてみると「水中は地上よりもタスクが多いんです。ポージングや表情だけでなくて、息のこと、バランスを取ること……地上で良く撮られるための技術と、水中だからこその技術と、どっちも必要」とのこと。

では、水中の技術とは?「たとえば、深く潜るためには耳抜き(気圧や水圧の変化で鼓膜の内外に生じた圧力差を解消する方法)ができないと痛くてツライですから。4mの水深でもハシゴを一段下がるだけでとても痛いんです……今日は耳抜きがあまりうまくできなかったので、一段ずつ確かめながら……」と、水中ならではの苦労を教えてくれました。

「水中ニーソ」まさじさん4

そんなまさじさんが「彼女はスゴイ」と慕い、制作スタッフからも「彼女は別格」と評されるのが、次に登場する真縞しまりすさんでした。

人呼んで“水中の申し子”、真縞しまりすさんの美しき撮影
「水中ニーソ」真縞しまりすさん

『水中ニーソプラス』の表紙をはじめ、ホビーメーカー海洋堂とのコラボレーションフィギュア『1/10 水中ニーソ しまりすちゃん レジンキャストキット』では原型モデルを務めるなど、水中ニーソの代表的なモデルともいえる真縞しまりすさん。その“水中能力”の高さから、他のモデルよりも長い60分の撮影にも耐えられるといいます。

えみりさんが苦労している中層でのキープも「なぜかしまりすちゃんはすぐ出来た」そうで、その能力は「しまりすの謎技術」とスタッフやモデルから呼ばれているのだとか。その謎技術、この日もフルに発揮されていました。

「水中ニーソ」真縞しまりすさん2

白いマイクロビキニに真っ赤なリボンをまとって真縞しまりすさんが現れると、撮影現場からは「かわいい!」の声がゾクゾクと。今回はクリスマスをイメージした写真からスタート。クリスマスだけに「私がプレゼント」感を演出するためのリボンと星飾りというわけです。

「水中ニーソ」真縞しまりすさん3

このクリスマス写真は撮影翌日の24日には古賀学さんのTwitterで発表されており、聖なる夜に華を添えてくれましたが、撮影現場はやはり大変。リボンが外れたり、ウィッグの乱れを直したりと、細かな調整を続けながらベストな一枚を探っていく地道な作業です。

みなさま良きクリスマスイブをおすごしください〜。 #水中ニーソ pic.twitter.com/Lxs1BCn1BM

— 古賀学 (@manabukoga) 2015, 12月 24


「水中ニーソ」真縞しまりすさん4

そして「しまりすの謎技術」と評される中層でのキープも見事に決まります。まるで見えない台に腰掛けているかのごとくポーズを保つ姿は、たしかに「どうやっているのかわからない」と間近で見ても感じるほど。

「体力はすっごいあるんですよね。スポーツは極真空手合気道、それと中学生からダイビングを続けていましたし、運動神経もある方なんです。ラッキーでした」と真縞しまりすさん。スタッフから「水中の申し子」と呼び声が上がるのも納得の撮影でした。

「水中ニーソ」真縞しまりすさん5

古賀さんも「メモリーをフルに使いきった! さすがの撮れ高」と手応えを感じているよう。実は『水中ニーソ』月刊化の裏には、撮れ高があるにもかかわらず発表できていない写真が大量にあるという事情も関係しているのだそう。月刊化して、秘蔵ショットも続々放出されるはずです。

クリスマスに続く「お正月バージョン」の写真も近日公開の予定。撮影の様子を思い浮かべつつ、古賀学さんのTwitterをチェックしてみると、楽しみが大きくなるかもしれませんよ。

えみりさん、まさじさん、真縞しまりすさんの撮影はこの後も続き、数々の作品がつくられていきました。“秘蔵っ子”えみりさんと、“申し子”しまりすさんのペア撮影もあり、リリースが待ち遠しい限りです。

「水中ニーソ」真縞しまりすさん6

「水中ニーソ」真縞しまりすさん7

「水中ニーソ」真縞しまりすさん8

水中メイクならではの苦労は「摩擦との戦い」にある!
「水中ニーソ」水中メイクのコツ
撮影をサポートするスタッフの中でも、モデルの印象を大きく左右するのがメイク。どのようなポイントに気をつけているのか、『水中ニーソ』の初期からメイクを担当するユウリさんに「水中で落ちずに映えるメイクのコツ」を聞きました。

1.油性の化粧品を使う
ユウリさんがまず見るのは化粧品の原材料欄。通常、多く含まれている順に記載されているので、「水」が初めの方に表示されているものは水性のものが多いため、溶けやすく相性が悪いそう。また、水中では特に赤色が吸収されて見えるため、地上との発色の異なりを考えるのもポイントです。

2.水中メイクが取れてしまう「3つの敵」を知る
メイクの取れ方は「水に溶けてしまう」「水面との摩擦」「顔をぬぐってしまう」の大きく3点にあります。「水面との摩擦」は水中に潜る際に、水が顔をなぞる瞬間に起きる摩擦のこと。また、人間は水中から顔を出すと無意識に手でぬぐってしまうのも悩みの種だとか。たしかに水中ニーソのモデルたちは水中から上がってきた時も、なるべく顔に触れないようにしていました。

3.本来の用途「以外」でも使えるものなら使う
水に強いと言われるウォータープルーフの化粧品でも、摩擦に弱いものがあるのだそう。摩擦への耐久度を見るために、ユウリさんは「テスターを一度肌につけ、乾くまでお店の中を歩いてから、こすって確かめてみる」と地道なトライを続けています。

最も向いているのは「水中バレエ」に用いるメイク道具とのことですが、単価と揮発性が高く「摩擦に弱いものもある」と言います。「だから、たとえばペンシルでしっかり乗せて綿棒で肌に密着させたり、眉はウォータープルーフのアイライナーで書いちゃったりもします。アイシャドウがほしかったら、アイシャドウ以外の化粧品も見て、使えるものを探していますね」とユウリさん。

「水中ニーソ」水中メイクのコツ2

今回の撮影で具体的に意識した点を、真縞しまりすさんのメイクを例にうかがってみました。

「妖精さんっぽい雰囲気を出したかったんです。だから、眉毛とまつげをどれだけ白く潰すかを意識しています。地上だと強烈だけど、水中だからこそ許されるメイクでしたね。

今回は手に入れられた白マスカラが水性だったせいで、最後に剥がれてしまったのが心残り。いまだに試行錯誤の日々です。古賀さんたちと出会うまで、こんなに水中メイクのことを考えるなんて思ってもみなかったです」

ひとつの現場ごとにノウハウを貯め、次に活かすのは古賀学さんやモデルだけではなく、スタッフも同じ。だからこそ他とは違う表現が生まれていくのだろうと感じます。ちなみに、『月刊水中ニーソ』の4月号でメイク特集が組まれるとのことなので、水中撮影にトライしたい人たちは必見です!

古賀学ミニインタビュー:月刊化を経てどんな“水中”を目指すのか?
「水中ニーソ」古賀学さんインタビュー
最後に、古賀さんに水中ニーソのこれまでの歩み、月刊化では出版社から離れインディーズでの発表の道を選んだ理由、そして今後の展開についてもお聞きしました。

──改めて、そもそもどうして水中ニーソ始められたのでしょうか?

古賀さん 映画『ヘルタースケルター』の水中撮影を担当することになった時に、事前の準備がてら、一眼レフでの実験撮影を水中で行っていたんです。

試し撮りとして、競泳水着にスキューバ器材をつけてダイビングしている様子を動画撮影していたのですが、たまたま衣装にニーハイソックスが何種類かあって、白ニーハイの透け具合をチェックするべくそのまま履いてもらって撮影したのが最初の「水中ニーソ」です。2012年1月のことでした。

──これまで、撮影中/撮影外で一番ひやっとした瞬間は?

古賀さん 撮影中にひやっとしたくないので、ひやっとしない準備をしています(笑)。安全管理を任せられる水中スタッフとか、細かく現場をイメージした香盤表とか、モデルのスキルに合わせて撮影内容を考えて、現場で悩む必要がないようにしています。

ただ、コラボプロジェクトによっては、モデルが先に決まっているケースがあるんです。撮影現場を見ていただいてお察しの通り、モデルの技量というものも、地上撮影以上に水中撮影の出来を左右する大きなポイントなんです。だから、そのモデルが水の中で輝かなかったらどうしよう? と心配しながら臨むこともあります。

──意外とここは理解されていない、というポイントは?

古賀さん カジュアルにしたくて意図的にうすっぺらくしているのですが、見た目以上にお金がかかることは意外と知られていない。

カメラやハウジングだけで50万ほど、それに追加で、1台5万前後する水中照明用のライトなども随時買い足しています。

それに、一回の撮影で使用するスタジオ代にしてもダイビング講習用のプールを貸し切っているので、人件費含めてかなりの費用がかかります…!

──2015年、月刊化されたり地上波CMの映像を手がけられたりと、大きな動きがあった1年だったかと思いますが、9月に刊行された写真集『水中ニーソキューブ』以降、それまでの版元だったポット出版から離れてなぜインディーズという形になったのですか?

古賀さん 2013年に写真集化を打診してくれた編集の大田洋輔さんがポット出版を退社したということが大きいです。

引き続きポット出版さんにお世話になるか、他の版元さんに持ち込むか、あるいは自分で出版して販売するか。いろいろ思案していたところに、アーティストの村上隆さんがインディーズ案を面白がってくれたことに後押しされて、自分で出版する道を選びました。

『水中ニーソキューブ』は、展示やイベントでの手売り以外にもAmazonやヴィレヴァンでも取り扱っているので、入手しづらいということもないと思います。『月刊水中ニーソ』は今のところ、BASEのネットショップでの限定的な展開にとどめています。

「水中ニーソ」古賀学さんインタビュー2

──なぜ月刊化されたのですか?

古賀さん これまでも展示やイベントで販売していた小さな写真集が好評でした。100ページ級の写真集だとできない小まわりの効く単発コンセプトや実験が可能なので、これをレギュラー化できないかという試みの意味が大きいです。

──「水中ニーソ」の今後の展開は?

古賀さん まずは毎月刊行を決めた『月刊水中ニーソ』を進めていきます。夏の暑い時期に向けて展示やボリュームのある作品集もつくりたいです。前作の『水中ニーソキューブ』が傑作なので、どうやってそれを超えるコンセプトを見つけるか、これから考えていこうと思っています。
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